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コラム

誰もがいつかは障害者 「迷惑かけてもいい」社会に…映画「こんな夜更けにバナナかよ」原作者の渡辺一史さんが新著(下)

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「人を煩わせない」…不寛容な日本社会

「あなたは障害者枠だから、座っているのが仕事」と暴言吐く雇用者

札幌市内の繁華街をボランティアの押す車椅子で進む鹿野さん。街に繰り出すのが何よりの楽しみだった(撮影・高橋雅之)

――摩擦を恐れるあまり、他人とふれ合う機会が激減しています。人と人のつながりが生まれにくい時代ではないでしょうか。

 「人に迷惑をかけてはいけない」という規範意識がものすごく強いのが日本の現代社会です。自分が人の手を煩わせることを恐れた結果、誰かが人を煩わせることにも、とても不寛容になっているように思います。

 映画で鹿野さんを演じた大泉洋さんが、テレビ番組でご一緒した際に「これまで、自分の娘は人に迷惑をかけないように育てたいと思っていたけれど、この映画に出演して、一人でできないことは人に頼ってもいいんじゃないかと思うようになった。娘には、困っている人がいたら助けられる人になってほしい」と言っていました。

 僕が伝えたかったことを、とても的確に分かりやすく表現してくれたように思い、すごくうれしくなりました。

――映画の中でも鹿野さんはワガママ放題でした。一見、迷惑きわまりないのですが、若いボランティアたちは鹿野さんに振り回され、もみくちゃにされる度に、一皮、二皮とむけて成長していきます。

 映画で三浦春馬さんが演じているボランティアの学生は、何事にも受け身で頭でっかちという、今どきの若い健常者の典型のような存在です。その彼にも、大泉さん演じる鹿野さんは手加減なしにぶつかっていきます。

 そういう健常者と障害者の衝突は、1970年代にはもっと闘争的でした。障害者運動の中で、デモが繰り返された時代です。

 この頃のテレビドラマ「男たちの旅路」シリーズ(脚本・山田太一)に「車輪の一歩」という一編があります(1979年、NHK)。その中で、「人に迷惑をかけてはいけない」と萎縮する車椅子の青年に、鶴田浩二さん演じる主人公のガードマンが、「君たちは迷惑をかけたっていいんじゃないのか」と語りかけるのです。

――原作に登場する鹿野さんの友人も、「かけていい迷惑をかけるのも俺たちの仕事なんだ」と言っていますね。この人は車椅子で夜遊びに出掛けては、通りすがりの人に頼んで、階段を担ぎ上げてもらったりしていました。

 その友人も、当時「車輪の一歩」を見て、強い影響を受けたと聞いています。

 1990年代が舞台の映画、2000年代初めに書かれた原作、そして今回の新刊。時代はバラバラですが、それぞれに込められたメッセージは、1970年代の山田太一さんのドラマと通じ合っているんです。

 「迷惑をかけてもいい」なんて聞くと、「じゃあ犯罪もいいのか」ということを言う人がいます。もちろん、かけてはいけない迷惑もありますが、できないことを誰かに助けてもらうのはいいんじゃないかと。そして、「かけていい迷惑」も、かけっぱなしではなく、自分にできることがあればお返しするという気持ちが大切なんです。

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