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コラム

「障害者の生きる意味」を問う声に、僕の答えを示したい…映画「こんな夜更けにバナナかよ」原作者の渡辺一史さんが新著(上)

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 筋ジストロフィーの男性とボランティアたちを描いた映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の原作者でノンフィクションライターの渡辺一史さんが新著『なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまプリマー新書、税別880円)を刊行した。映画の原作を出版してから16年を経て、再び「障害」を通じて人と人のつながりについて考え、若者向けの書籍としてまとめた作者の思いを聞いた。(ヨミドクター 飯田祐子)

「生老病死」が凝縮された世界

「障害者の生きる意味」を問う声に、僕の答えを示したい…映画「こんな夜更けにバナナかよ」原作の渡辺一史さんが新著(上)

――映画の原作となった『こんな夜更けにバナナかよ』(北海道新聞社、文春文庫)は、筋ジストロフィーの鹿野靖明さんが42歳で亡くなるまでの日々と、彼を取り巻くボランティアの人間模様を描き、大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞に選ばれました。その次は、北海道の無人駅を題材にした『北の無人駅から』(北海道新聞社)でサントリー学芸賞などを受賞しました。3冊目となる今作で、改めて障害や福祉をテーマに選んだ狙いは?

 2003年に『バナナ』の本が出た後、筑摩書房の編集者だった松田哲夫さんに「ボランティアをテーマに本を書いてみないか」と誘われたんです。ちょうど筑摩書房が高校・大学生らビギナー向けのシリーズとして「ちくまプリマー新書」の刊行をスタートしたところで、そのうちの一冊にという話でした。

 もちろんやりたいと思ったのですが、すでに次の題材は「無人駅」と決めていました。それで、「少し待って下さい」とお願いしたんです。無人駅の本が書き上がるまでに予想外に時間がかかってしまい、結局、14年越しでようやく約束を果たすことができました。

――その間、ずっと障害者の取材を続けていたのですか。

 鹿野さんの取材を通じて、たくさんの障害者や彼らの周囲の人たちと出会いました。02年に鹿野さんが亡くなった後も、交流が続いています。

 障害者を取り巻く世界には、「生老病死」が凝縮されている。知るほどに引きつけられ、興味が湧いてくるので、どれだけ書いても書き尽くせない。物書きとしては、一度関わったら一生抜け出せない世界だと感じています。

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鹿野靖明さん(手前)を取材する渡辺一史さん(奥の左から3人目)

――当初はボランティアをテーマとする予定だったのが、「人と人の支え合い」という、より大きな視点で社会を論じる本になったのですね。この間、状況にどんな変化があったのでしょうか?

 04年にイラクでボランティアとカメラマンら3人が拘束される事件が起きました。「自己責任論」が台頭し、様々な意味でボランティアがクローズアップされた時代でした。

 それからの十数年間で、障害者福祉の制度が大きく変わりました。当時は、鹿野さんのように施設を出て一人暮らしをしようと思ったら、自力でボランティアを集めて24時間の介護態勢を作るしかなかったのですが、鹿野さんが亡くなった後、ヘルパーなどを利用するための費用が自治体から給付される制度がより充実しました。自立生活を送る障害者がぐっと増えましたが、障害者が自分でボランティアを集める時代ではなくなりました。

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