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がんを語る

医療・健康・介護のコラム

乳がん(下)仕事はやめない、家事・子育ては人に頼る…「一人じゃないよ」と伝えたい

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講座受けピアサポートを始める

――体験者の言葉に救われるということですが、吉田さんもそういう活動をしていますね。きっかけは?

吉田(写真) NPO法人「キャンサーネットジャパン」が行っている、自分の経験を生かして患者をサポートする「乳がん体験者コーディネーター(BEC)」の養成講座を受講したことです。

――私は講師の経験があります。何期でしたか。

吉田 7期です。

堀内 私も9期で受講しています。

吉田 私はリンパ節を18個取っているので、手術の後、リンパ浮腫がすごくつらくて、手が上がらなかったんです。背中が重たくて泣いているときに、患者仲間からリンパドレナージというマッサージがあると聞きました。その先生のところに行ったら、自身も乳がん経験者で「BECという資格の講座があるわよ。勉強しはったら」と紹介されました。多分、見るからに私がちょっともがいているふうに見えたと思うんです。で、実際に受講したら、「勉強したからには、ピアサポートをしないといけないな」と思ったんです。いつも単純ですが、とにかくやってみようと。

 病院に「ピアサポートの資格を取ったので、させてください」と言ったら、「いいよ」ということで、2013年に1年間やらせていただきました。でも、素人が院内で活動することに反対意見の看護師さんもいて、どうしようかと思っていたら、パンフレットの印刷会社が会議室を貸してくれることになりました。それが今の会のスタートです。

――もともと心理カウンセラーの資格も持っていらっしゃるということで、通常のピアサポートとちょっと違いますね。

吉田 外へのアピールにはなりますね。そういうのを見て相談に来られる方もいます。

医師は伝えたつもりでも患者はわかっていない

――どんな相談が多いですか。

吉田 一番多いのは医療者、医師とのコミュニケーション。医師は正しい情報を伝えたつもりになっていても、素人である患者は全然わかっていないということが多いです。

――本当にそうですよね。医師はもうちゃんと伝えたから、あとは考えてねと言うけれども、そんな簡単なものではない。

吉田 選択肢はこれだけあるよと言われても、どうやって選んだらいいんでしょうということです。

――がん治療は選択肢がすごく増えていて、乳がんもそうです。それを説明するのはとても大変で、医師は正しいことを言わなきゃいけないという気持ちがあると思います。だから、ついつい、「Aはこうで、Bはこうで、Cはこうだから、1週間後の次の予約までに考えてきてください」ということになりがちです。

吉田 だから、その患者さんと医師の間に私たちのようなピアサポーターを入れたらいいと思うんです。

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男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
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1件 のコメント

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医師と患者の理解と感情のギャップと運用

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

(前編もふまえて) 前立腺癌検診の功罪の記事も出ていますが、保険診療の内外で様々な問題や知見の共有不足があります。 内視鏡だけでなく、CTもMR...

(前編もふまえて)
前立腺癌検診の功罪の記事も出ていますが、保険診療の内外で様々な問題や知見の共有不足があります。
内視鏡だけでなく、CTもMRIも超音波も進化したのに、いまだに標準のがん検診は旧式のままです。

診断や治療の急速な変化や医療内外のITによる情報拡散に、医師個人のみならず医療社会がまだついていけてないからです。
本文にもあるように、所詮医師はがん患者ではなく、スキルとして共感態度は示せても、心から寄り添える人は多くありません。
また、非人間的人格の内包で非人間的な一部の仕事が遂行できる矛盾の苦しみがあります。
そのことを患者や患者会側が理解して健常者や役所も巻き込んで運用のコツの共有や逆支援なんかを考えていただければ社会は変わるのかもしれません。

普通の医師は高度な知識や技術を専門分野の多岐にわたって更新し続けることは困難で、それが医療の細分化とチーム制に繋がっています。
一方で、患者は治療の全身的な影響について出来るだけ個人や小グループにサポートしてもらいたいわけで、現実と認知のギャップを埋めていくにあたっての矛盾や不十分もあります。
不眠だから睡眠薬を出すだけでなく、不眠の原因となる心の悩みや病気の症状に薬剤副作用まで寄り添ってほしい。
しかし、それは高コストや医療環境の変化への支援が必要になるのは当たり前。
それが医療費抑制の問題なんかの社会全体の問題との交錯するポイントです。

「医療制度の矛盾や医師の働き方改革なんか患者さんは関係ありません。」
といわれれば、
「患者さんのための標準医療外の仕事は医師には関係ありません」
になってしまうでしょう。

金子みすゞのこだまみたいですが、お互いに歩み寄るか、時代の変化を待つか、どうしたいのか?
あるいは地域ごとの取り組み自体が、今後の市町村の在り方や人口の増減に影響を与えるのかもしれません。

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