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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

コラム

やっぱり怖い高齢者の肺炎 予防は何といってもワクチン

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肺炎球菌ワクチンは大きく分けて2種類 

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 さて、肺炎は治療も大切ですが、予防も大切です。

 肺炎球菌予防に最もパワフルなのはワクチンです。肺炎球菌ワクチンには、大きく分けると2種類あります。肺炎球菌にも細かいサブタイプがあるのですが、たくさんのサブタイプをカバーするけど効果はやや弱いワクチンと、カバーするサブタイプは少ないけど、効果が大きなワクチンです。前者はニューモバックス、後者はプレベナーという名前で知られています。

 プレベナーは小児の定期接種に組み込まれています。おかげで、日本の子どもたちの肺炎、中耳炎、髄膜炎といった、怖い肺炎球菌の感染症は激減しています。よかった、よかった。

定期接種は65歳から5年区切り 接種機会奪う「お役所仕事」

 高齢者への肺炎球菌はニューモバックスが定期接種となっています。ただし、65歳から、5歳区切りにしか接種機会がありません。65歳なら接種できるけど、67歳だとだめなのです。うんざりするような「お役所仕事」です。

 このせいで、接種機会を失っている人がたくさんいます。なるほど、机上の空論的計算では、毎年この制度をキープしておけばいつかはすべての高齢者が肺炎球菌のワクチン接種をできるのですが、現実世界はそんなに便利にできていません。忘れていたり、体調を崩して接種機会を失ったり。厚労省の官僚たちはもっとリアルワールドを見てくれよ。それがだめなら、せめて現場に近い専門家の声を聞いておくれ! 現場を知らない机上の空論的学者ではなくね(いや、ついつい本当のことを……)。

両方打つ方が予防効果が高い

 で、実は高齢者にはニューモバックスだけでなく、プレベナーも打ったほうがより予防効果が高いことが分かっています(2)。ですので、ぼくは自分の患者さん(高齢者)にはプレベナー、次いでニューモバックスを接種することをおすすめしています。こちらはまだ定期接種ではないので、お金がかかるのが欠点ですが。(岩田健太郎 感染症内科医)

(2)Bonten MJM, Huijts SM, Bolkenbaas M, Webber C, Patterson S, Gault S, et al. Polysaccharide Conjugate Vaccine against Pneumococcal Pneumonia in Adults. New England Journal of Medicine. 2015 Mar 19;372(12):1114-25.

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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1件 のコメント

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種々の肺炎と起炎菌の戦術的理解と対策

寺田次郎 放射線科サッカー部スペイン代表

僕も3冊くらいしか感染症の教科書は読んでいませんので、使う薬剤数を絞って手にあまる症例は、検査で診断を絞って領域専門医や感染症専門医にパスできれ...

僕も3冊くらいしか感染症の教科書は読んでいませんので、使う薬剤数を絞って手にあまる症例は、検査で診断を絞って領域専門医や感染症専門医にパスできればいいと考えています。
マイナーな特定臓器への移行性とか細かい統計の数字とか覚えるより、画像診断を真面目にやる方が僕には適性があります。
なんでもできる自信満々なお医者さんを求める患者さんも多いですが、そんな医師は幻想だと知るのも患者リテラシーですね。

サッカーではゴールを守る、ボールを奪うという2つの守備を状況に応じて、個人と組織でやります。
これは感染症から身を守る時にも使える判断です。
ワクチンの原理とはコントロールされた感染です。
健康な時にわざと感染して、身体の免疫組織に菌への耐性を持たせる。
感染症のファクターとして、保菌者の抵抗力も重要だからです。
サッカーでも、相手にわざとボールを持たせて、攻撃パターンを分析してから、仕掛けたりしますが同じです。

我々は菌やウイルスといった攻撃者から様々な臓器を守る守備をしないといけませんので、相手や自分の身体の構造や性質を知らないといけません。
守るべきゴールは肺だけでなく、肺炎も市中肺炎だけではありません。
抗生剤や抗ウイルス剤、ワクチンも万能ではないし、欠点や合併症があることも確かです。
その運用に関しては、また、こちらで触れていただきたいところです。

そして、本文にもある広域スペクトラム抗生剤の乱用の問題ですね。
風邪に抗生剤不使用の枠組みと同じく、適正使用に向けたワークフローの見直しも今後検討されるべきと思います。
どんな敵でも止めるGKやCBのようですが、頼り切ると全体のバランスが崩れますし、それ以上の攻撃者(耐性菌)が出てきたときの打つ手が無くなります。
そして、医師も患者も、そもそもそれが肺炎かどうかを、どの種の肺炎を考えなくなってしまい誤診から後手に回ります。

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