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心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」

コラム

自慢の息子が突然「このクソババァ!」…14歳前後から始まる「悪夢の10年」は、親を嫌いになるホルモンのせい?

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 「先生、『親』ってこんなに大変な仕事だったんですね!」

 E代さんは心療内科の外来で、ため息をつきながらそうこぼした。

 彼女は現在、48歳。診断は「抑うつ状態」。3年前に初めて来院したときは、職場のストレスからくる「適応障害」の診断だった。会社の上司が高圧的な人で、まだ仕事に慣れないE代さんに、次々無理難題をふっかけてくる。毎日のように繰り返されるいじめとイヤがらせで、E代さんはすっかり体調を崩してしまった。胃が痛くて、眠りが浅い。朝起きられなくて、会社に行くのも大儀になってきた。心療内科を受診する気になったのは、それがきっかけだったのだ。

 「適応障害」の診断書を提出し、職場を替えてもらった。イヤな上司の顔も見なくてすむ。もうこれで体調も戻るはず。ホッとしたはずなのに、症状はおさまらなかった。「どうして?」とE代さんは考えた。そして思い当たったのが、高校に入ったばかりの息子のことだった。

自慢の息子が突然「このクソババァ!」…14歳前後から始まる「悪夢の10年」は、親を嫌いになるホルモンのせい?

イラスト:西島秀慎

「ボクがお母さんを守ってあげる」と言った優しい子

 「子どもが産めない体じゃないの?」と、しゅうとめに嫌みを言われながら、ようやく授かった大切な一人息子。夫が単身赴任となり、浮気が発覚してひと騒動あった時も、子どもに苦労をさせてはいけないと、必死になって育ててきた彼女の宝物だ。そのかいあって、息子は頭が良いだけでなく、心優しい男の子に育ってくれた。

 夫婦げんかに疲れ果てた夜、「ボクがお母さんを守ってあげる」と言われたときは、不覚にも涙がこぼれた。

「うるさいっ!」と壁に拳で穴を開け

 しかし、そんな自慢の息子は、中学2年頃から急に無口になった。何でも話してくれていた息子は、心配そうな彼女の話しかけにも、うざったそうな目をするばかり。中学3年になると成績が落ちて、第一志望の高校は難しいと先生から言われた。それでも息子は黙っているだけだ。

 「どうしたの? どうして何も話してくれないの?」と問いかけるE代さんに息子の一言が飛んだ。

 「うっせいな。黙れよ、このクソババァ!」

 E代さんは驚愕きょうがくした。 

 そこにいるのは、これまでの「かわいいボクちゃん」ではなく、見知らぬ男性のようだった。

 高校に入る頃から息子の態度はさらに悪化した。試験の結果を尋ねようとしたときは、「うるさいっ!」と罵声が飛び、本を投げつけられた。さらに怒りがおさまらないのか、息子は拳をたたきつけて、壁に大きな穴を開けてしまったのである。

 「あの時はホントに怖かった。私の父が暴力的な人だったので、その場面がよみがえり、一瞬で凍りついてしまいました」

 E代さんはつらそうに、そう語る。

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梅谷 薫(うめたに・かおる)
 内科・心療内科医
 1954年生まれ。東京大学医学部卒。90年から同大学で精神科・心療内科研修。都内の病院の診療部長、院長などを経て、現在は都内のクリニックに勤務。「やまいになる言葉~『原因不明病時代』を生き抜く」(講談社)、「小説で読む生老病死」(医学書院)など著書多数。テレビ出演も多い。

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1件 のコメント

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流れ雲

枯れ枝

どうしたら  良いのかね 薬で 直らず 自分を精神的に 強くするしか無い 子供も 精神的に 不安定な時代 時間の経過を 見るしか無いよ 人生経験...

どうしたら  良いのかね 薬で 直らず 自分を精神的に 強くするしか無い
子供も 精神的に 不安定な時代 時間の経過を 見るしか無いよ 人生経験
積めば  自分の立場が 理解できるかも。。。

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