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「産後うつ」に広がる支援…経験者と座談会、母子宿泊で心身の休養も

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 出産後に心身に変調をきたす「産後うつ」に苦しむ母親を支援する取り組みが各地で広がっている。福岡、佐賀両県では産後うつ経験者が、子育て中の母親らを対象にした座談会を開催。自治体でも発症を防ぐための精神的ケアに乗り出した。

 産後うつ経験者による「うつうつお母ちゃんの座談会」は月1回、福岡県久留米市と佐賀県鳥栖市で交互に開催。子育て情報紙の編集長、池田彩さん(41)(久留米市)が、情報紙にコラムを執筆していた鳥栖市の女性(47)から産後うつに苦しんだ経験を聞き、「同じような母親が安心できる居場所をつくりたい」と企画した。昨年6月に始まった座談会では、女性が自らの経験を語り、参加者の悩みに耳を傾ける。

 女性は2007年に長女(11)を出産。長女はうまく母乳が飲めず、30分おきの授乳で眠れない日が続いた。次第に食欲がなくなり、何もないのに涙があふれた。長女が泣いても反応できなくなり、「家事も育児もままならず、自分を責めた」と振り返る。出産2か月後、「産後うつ」と診断された。

 医師から「産後うつは二つの命の問題。しっかり治療すれば親子で笑って過ごせる」と説得され、長女と離れて入院することを決めた。投薬治療を受け、昼夜逆転した生活リズムを整えた。睡眠や食事が取れるようになり、約2か月で退院できた。

 昨年10月の座談会に参加した福岡県朝倉市の女性(32)は、第2子を出産後に発症。育児と仕事の両立ができるかどうかという悩みを打ち明けた。「妊娠・出産は幸せなイメージが強く、後ろ向きな話は家族や友人にもできない。同じ経験をした人とのつながりは心強い」と話す。

 産後うつと診断された参加者の中には、次の妊娠・出産でうつの症状が再発することを恐れる人も少なくない。長男(6)を妊娠中に「産前うつ」も経験した鳥栖市の女性は、「苦しみを知るからこそ、『大丈夫』と言ってあげられる。一人で抱え込まず、座談会に足を運んでほしい」と呼びかける。

          ◇

【産後うつ】  出産後に起こる心身の不調で、治療が必要な病気。抑うつ状態になり、物事への興味や楽しいと思う気持ちが失われ、不眠や意欲の低下に悩まされる。出産に伴う身体の不調に、ホルモンバランスや環境の急激な変化、育児での孤立など様々な要因が加わって起こるとされる。国立成育医療研究センター(東京)の調査では、2015~16年の2年間に死亡した妊産婦357人の死因の3割が自殺で、産後うつの影響が指摘されている。

産後うつチェックリスト

 次の状態が一つでも、2週間以上続く場合は産後うつの可能性が高い(内村教授による)

▽眠れない

▽些細(ささい)なことでイライラしたり、涙が流れたりする

▽何もする気にならない

▽笑顔や言葉数が減った

▽物事がうまくいかないのは、自分のせいだと感じる

▽服装や身だしなみを構わなくなる

▽死にたいと思う

母親のケアに、自治体も動く

 母親のケアには自治体も動き出している。

 福岡県行橋市は昨年10月、家族の支援が受けられず、育児に不安を持つ産後6か月未満の母子を対象に、産科医院などで最大7日間過ごす宿泊型支援を始めた。母親が心身の休養を取ることが目的で、育児相談も受けられる。自己負担額は収入に応じて、無料から1日5000円まで。同様の支援は、福岡市や福岡県宗像市なども取り組んでいる。

 佐賀市は17年7月から、心身の異変を早期に発見して支援や治療につなげる「産後2週間健診」を導入。心身の状況や子育て環境などを尋ね、支援が必要な場合は助産師が訪問する。

 久留米大の内村直尚教授(精神神経科)は「産後うつを防ぐためには十分な休息が必要で、家族の支援が欠かせない。母親自身はもちろん、周囲の人も少しでも異変を感じたら、医師や助産師にSOSを発信してほしい」と話している。

          ◇

 次回の「うつうつお母ちゃんの座談会」は2月13日午前10時半、鳥栖市のあいりす保育園内の放課後児童クラブで。参加費500円。問い合わせは、池田さん(okaasankyusyu@gmail.com)へ。

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