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障害者、農業の担い手

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選果場作業を共同受注

 障害のある人が農業分野で働く「農福連携」の取り組みが進んでいる。農業従事者の高齢化が進む中で、障害者に担い手としての期待が高まっているためだ。(堀家路代)

 5人は、大分市にある就労継続支援事業所「銀河鉄道」の利用者で、精神障害や知的障害がある。この日は、果実の大きさをそろえるため重さを1個ずつ量り、丁寧に箱に並べていった。工賃は出来高払いで、1人あたり1日2500円程度になるという。 大分県杵築市にあるJAおおいたの杵築 柑橘かんきつ 選果場を訪ねると、男女5人が同市のブランドミカン「美娘(みこ)」の箱詰め作業を行っていた。

 作業に付き添った同事業所の主任、高木亮佑さん(34)は「菓子の箱折りなどの作業だと、1日800円程度。選果場は工賃が良く、皆仕事へのやりがいを感じている」と話す。

 この選果場には、10か所の障害者就労支援事業所が登録し、利用者が箱詰めや袋詰めを行っている。同選果場の専任課長、藤原圭三さん(45)は「手作業も多いので人手が不足している。来てもらえて本当に助かる」と話した。

 事業所の登録や仕事の割り振りを調整しているのは、同県別府市の社会福祉法人「太陽の家」だ。2013年度に県の委託で共同受注の事務局を設置。JAや農業法人などから農作業の依頼を受け、県内の事業所向けに作業内容などの説明会を開いている。17年度は延べ83事業所の利用者が農作業に従事し、合計1689万円が支払われた。

 こうした共同受注が始まって仕事の種類が増え、現在はトマトの箱詰めやサツマイモのツル切り、ネギの出荷調整なども手がけるようになった。共同受注センターの矢吹政秀さん(62)は「農業関係者には当初、『障害のある人にできるのか』という不安の声もあったが、徐々に理解が進んできた」と話す。

野菜栽培から加工まで

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畑仕事をする「れんこん」の利用者

 畑を借りるなどして自ら農業に取り組む事業所も増えている。独自の工夫やこだわりで売り上げを伸ばした例もある。

 福岡県久留米市に2009年に開所した就労継続支援事業所「れんこん」は、畑やハウスを借りて、農薬を使わずに野菜を栽培。県内の道の駅などで販売している。

 11年には収穫したタマネギやゴマを材料に、無添加ドレッシングを開発した。県産のしょうゆや酢を使用し、障害者がつくった製品を集めた福岡県のイベントでは2年連続グランプリを受賞。大手航空会社が空港に設けたファーストクラスのラウンジで提供された。

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タマネギを豊富に使ったドレッシング

 「タマネギを26%も使っていることをアピールしたほうがいい」と指摘を受けてラベルを変更。今年度の販売本数は1万本を超えるという。同事業所の八木正明代表理事は「農業は同じ作業の反復で覚えやすく、作物を育てる楽しさもある。障害のある人に向いた仕事ではないか」と話す。

農福連携、国も後押し

 農業分野では高齢化や後継者不足が深刻だ。2018年の農業従事者の平均年齢は67歳。一方、福祉分野では障害者の工賃の低さや働く場の確保が課題となっている。

 農福連携を推進するため、国は障害者が働くための農園の整備や、生産技術を習得する研修に補助金を出すなどの制度を設けた。関心がある社会福祉法人や農業法人などのためのパンフレットも作成。ハローワークを通じて農林漁業の仕事に就いた障害者の就職件数は17年度は2907件で、5年前の1.2倍に伸びている。

 各県も、障害者が作った農産物や加工食品を販売する「マルシェ(市場)」を開いて後押ししている。福岡県は、昨年9月にJR博多駅前、同11月にJR小倉駅でマルシェを開催。計31事業所・施設が店を出した。県は出店者向けに商品をPRする手法を伝えるセミナーも開いた。

 山口県では、NPO法人・県社会就労事業振興センターにコーディネーターが配置され、ニーズの掘り起こしやネットワークの構築、農作業受注のマッチングなどを行っている。

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