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慢性腎臓病、透析回避のカギは睡眠

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約1,600人を4年間追跡

慢性腎臓病、透析回避のカギは睡眠

 日本では、高齢化や生活習慣病の増加に伴い、透析患者が増えている。透析には多額の医療費がかかるため、慢性腎臓病(CKD)の重症化による透析導入をいかにくい止めるかが目下の課題である。大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの山本陵平講師らの研究グループは、CKD患者を対象に睡眠とCKDの進行による透析導入リスクとの関連を検討。その結果、CKD患者は睡眠の質が低いほか、睡眠時間が短いあるいは長いと、CKDの進行により透析に至るリスクが高くなることを明らかにした。詳細は、11月15日の「Clinical Journal of the American Society of Nephrology」オンライン版に掲載されている。

大規模疫学研究に参加のCKD患者を対象に解析

 CKDの重症化を防ぎ、透析導入患者の減少を実現するには、喫煙や運動不足などCKDの進行に関わる生活習慣を特定し、それらの改善につながる策を講じる必要がある。

 短時間睡眠などの問題を抱える睡眠障害が生活習慣病のリスクであることは、さまざまな研究から明らかにされている。睡眠障害がCKDのリスクであることも報告されているが、その多くは健康な人を対象とした研究であり、CKD患者に関しては、約400人を対象とした米国の小規模研究があるのみだ。将来、透析に至るリスクの高い通院中のCKD患者において、睡眠がCKDの進行にどのような影響を及ぼすかについて明確にする必要があった。

 そこで研究グループは今回、Chronic Kidney Disease Japan Cohort(CKD-JAC)研究に参加しているCKD患者のうち、研究開始時にピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)というアンケートに回答し、睡眠の質と時間を評価することのできた1,601人を対象に、追跡開始から約4年間にどの程度CKDが進行し透析に至ったかを調べた。CKD-JACは、国内17病院に通院中のCKD患者約3,000人を対象とする大規模疫学研究で、現在も追跡中である。

睡眠の質が低いと透析リスクが1.3倍に

 対象患者の平均睡眠時間は7.0時間。PSQI総合得点は、21点満点で6点以上だと睡眠の質が低いと評価されるが、37%が6点以上だった。追跡期間中に透析に至ったのは282人だった。睡眠の質が低い患者が透析に至るリスクは、正常の患者(PSQI総合得点5点以下)の約1.3倍だった。また、短時間睡眠(5時間以下)と長時間睡眠(8時間超)の集団は、睡眠時間6.1~7.0時間(平均6.9時間)の集団と比較して、透析に至るリスクがそれぞれ約2.1倍、約1.5倍だった。

 研究グループは今回、日本人CKD患者の大規模疫学研究データを用いて、CKD患者における睡眠障害の重要性を明らかにした。これらの結果を踏まえて、研究グループは「睡眠障害を認めるCKD患者では、その原因を特定し治療介入を行うことによって、CKDの進行抑制効果が期待できる」とコメントしている。(あなたの健康百科編集部)

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