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介護のいろは

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[介護のいろは](13)在宅での健康管理は?

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  介護が必要な高齢者が自宅で暮らし続けるには、食事や服薬、口の中の手入れなど、日々の健康管理をしっかりと行うことが重要です。介護保険サービスの「居宅療養管理指導」では、自宅を医師や管理栄養士、薬剤師ら専門職が訪れ、生活に役立つ助言をしてくれます。(藤本綾子)

専門家 生活踏まえ助言

■管理栄養士ら訪問

 

[介護のいろは](13)在宅での健康管理は?

村田さん(左)から野菜のムースの作り方を教わる真澄さん(大阪府守口市で)

 「いつもと違う形状ですが、のみ込めますか」

 大阪府守口市の江端重夫さん(79)宅。医療法人社団日翔会(大阪府茨木市)の管理栄養士、村田味菜子さんが問いかけると、江端さんは野菜のムースを口にし、親指を立ててにっこりとうなずいた。

 江端さんは、下咽頭がんなどの治療の影響で年々食道が細くなり、食べ物をのみ込む力も弱い。2年半ほど前から月2回、村田さんに訪問してもらい、健康状態や体重の増減、食の好みに合わせた食事内容などのアドバイスを受けている。

 野菜のムースはこの日、村田さんが実際に台所に立ち、妻の真澄さん(76)らに調理方法を教えながら仕上げた。

 「メニューの幅が広がった。夫も食事に満足しているのか、固形物をこっそり食べて、のどに詰まらせることもなくなった」と真澄さん。長女の左恵子さん(51)も「父の体の状態から自宅の調理器具まで把握し、助言してくれるので心強い」と笑顔を見せる。

■医療行為はなし

 

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 居宅療養管理指導は、通院が難しい人が対象で、管理栄養士のほかに、医師や歯科医師、薬剤師、歯科衛生士の訪問も受けられる。往診や訪問診療とは異なり、診療や薬の処方などの医療行為は行わない。薬の飲み方や 口腔こうくう ケアの方法といった、健康管理や生活上の注意点などを、本人や家族、ヘルパーらに継続的に指導するのが目的だ。

 職種ごとに訪問回数の上限(月2~4回)と利用料が定められ、組み合わせることも可能。介護保険の支給限度額の対象外なので、他のサービスを限度額いっぱいまで使っていても自己負担分(1~3割)の費用だけで利用できる。

■職種超え連携も

 

 日翔会理事長の渡辺克哉さんは「専門職が生活環境を踏まえた上で、本人や家族の生活に寄り添った支援や助言ができる」とサービスの利点を説明する。医師や管理栄養士、言語聴覚士らで作る同会の在宅向けの食支援チームでは、医療保険なども使いながら、 誤嚥ごえん を起こしにくい食事の形状や姿勢の指導、のみ込む力を高める訓練を行っており、「様々な専門職が関わることで解決策が見つかることは多い」という。

 どんな専門家の指導が自分に必要か、まずはケアマネジャーや主治医に相談したい。

[専門家に聞く]服薬や副作用チェック

 

  複数の薬を服用する高齢者の場合、薬を適切に管理できていなかったり、副作用や飲み合わせの影響で体調を崩したりすることも少なくない。薬剤師による居宅療養管理指導の活用方法について、大阪府薬剤師会副会長の道明雅代さんに聞いた。

 

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 薬剤師の居宅療養管理指導について、「薬の宅配」と思っている人もいますが、決してそうではありません。

 役割の一つが、服薬の状況の確認です。自宅に行くと、大量の残薬が見つかることがあります。薬が飲めていない理由に応じて、1回分を1包にまとめたり、飲みやすい形状に変更したりするなど対策を提案します。

 もう一つの大事な役割が、薬の効き目や副作用の確認。食事や排せつ、睡眠、ふらつきなどの日常動作を聞き取り、薬の影響で問題が生じていないかをチェックします。

 「入れ歯が合わなくなった」など薬と無関係に思えることが、実は副作用が原因という場合もあります。薬によっては 徘徊はいかい など認知症に似た症状が表れることも。副作用だと分からなければ、さらに別に薬を処方される可能性もあり、見極めは非常に大切です。

 いずれも薬剤師が自宅を訪れることで、個々の状況をより正確に把握できます。ぜひ上手に活用してください。

<疑問や思い 募集します>
 「介護のいろは」は毎月1回の掲載です。介護に関する疑問や今後読みたいテーマ、介護に抱く思いも募集しています。〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「介護のいろは」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。

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