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体外受精の成否に関係!? ありふれた細菌の生殖器感染

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体外受精の成否に関係!? ありふれた細菌の生殖器感染

 妊娠適齢期のカップルの9~30%に上ると見積もられている不妊症。原因はいくつか報告されているが、その1つが膣や子宮頸管、精液などにおける細菌感染である。しかし、体外受精を受ける不妊症カップルの生殖器感染に対するアプローチについて、明確なガイドラインは確立されていない。今回、イタリア・シエナ大学の Susanna Ricci 氏らは、不妊症カップルにおける体外受精の結果から、生殖器の無症候性の細菌感染が不妊症に及ぼす影響を明らかにした。『PLOS ONE』11月16日オンライン版

不妊症カップルにおける生殖器感染の有無を調べた

 試験に参加したのは、シエナ大学病院に3年間通院した285ペアの不妊症カップル。いずれのカップルにも、生殖器感染の兆候や症状は見受けられなかった。

 全例、体外受精の前に検診を行った。精液サンプルは3~5日の性的禁欲の後、マスターベーションによって採取。そこからWHOのガイドラインに則り、精子の量、質、状態などの測定を行った。膣および子宮頸管のスワブ検査(拭き取り検査;以下、膣スワブ)は体外受精施術の2ヵ月前に行い、検体から  lactobacilli を定量した。lactobacilli は膣内常在菌の7~9割を占める主要な細菌とされている。グリコーゲン分解により乳酸を産生し、膣内を酸性に保って雑菌の侵入を阻害する。この試験では、1回のスワブで認められる lactobacilli が104コロニー以上で「通常量」とした。また、全ての検体で生殖器に細菌感染をもたらす病原菌の有無を調べた。

不妊症カップルの4割が無症候性の感染症

 試験に登録した不妊症カップルのうち、46.3%が生殖器に無症候性の細菌感染を起こしていた。

 無症候性の細菌感染の有無による精子の質を比較すると、感染が認められた検体では、明らかな運動低下が認められた。精液サンプルからの検出頻度が最も多かった細菌は Enterococcus faecalisE.faecalis)で、精子の形態と運動性のいずれをも悪化させることが分かった。

 女性では、感染が生殖器内の細菌叢に及ぼす変化を調べた。E.faecalisEscherichia coliStreptococcus agalactiaeGardnerella vaginalis への感染は、膣内の lactobacilli の量をいずれも有意に低下させた。

 これらの結果から、細菌性の病原体が精子の質や量、膣内の lactobacilli の量を低下させることが示された。

生殖器の細菌感染は体外受精の成否を決める

 体外受精の成功率と、生殖器の細菌感染との関連はどうか。体外受精で妊娠したカップルの85.7%は、生殖器に無症候性の細菌感染を起こしていなかった。近年の研究では、生殖器の細菌感染が体外受精の成功率にを低下させるといった結果が続々と示されている一方で、どの細菌が影響を及ぼすかは明らかにされていない。今回、E.faecalisUreaplasma urealyticumMycoplasma hominis の少なくともいずれかを感染していたカップルでは、体外受精の成功率が7.5%であったことから、生殖器における上記3種の感染は、体外受精の成否を予測する因子であることが示唆された。

生殖器の細菌感染へのアプローチ改善を

 Ricci らは試験結果を考察し、「不妊症カップルにおける生殖器の細菌感染への対応を改善すれば妊娠率が向上し、不妊治療の回数も減る。その結果、カップルの幸福や健康コストにも貢献するだろう」と、体外受精前の細菌感染検査のガイドライン構築に期待を寄せた。(あなたの健康百科編集部)

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