Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」
医療・健康・介護のコラム
かぜ薬を飲んだら「おしっこが出ない!」 救急外来を受診
はじめまして。市販薬にとても強い関心を持っている医師です。
このコラムでは、市販薬とのより安全な付き合い方を考えるきっかけにしていただきたいとの思いをもとに、医療現場で遭遇するケースを使って、市販薬の成分の説明をしていきます。「知っておくとお得」なメッセージをできるだけ分かりやすく、お伝えしたいと思います。
のどの痛みや発熱でかぜ薬服用 尿出ず、おなかに痛み

イラスト 西島秀慎
60代の男性がある朝、のどに痛みを感じました。その後、徐々に全身のだるさや節々の痛みが出てきて、昼前に体温を測ると38度の熱がありました。鼻水や咳はまったくありませんでしたが、かぜだと思い、早めに薬を飲んだほうがよいだろうと、自宅にあった市販のかぜ薬を昼から飲み始めたそうです。夕方にも同じ薬を飲みました。すると、その後、なぜか尿が出なくなり、おなかの下のほうに痛みが出てきました。時間がたつほどひどくなってきたため、夜間救急外来を受診しました。
鼻水やせきに効く成分の副作用だった
市販のかぜ薬には大抵、発熱やのどの痛みに効く成分のほかに、鼻水や咳に効く成分も配合されています。この男性の症状からすると、このかぜ薬には余計な成分(このケースでは鼻水や咳に効く成分)が含まれていたようです。
かぜ薬に含まれる抗ヒスタミン薬や抗コリン薬は鼻水を抑えますが、副作用で自律神経に作用して、尿が膀胱にたまっても排出できない「尿閉」を起こすことがあるのです。前立腺肥大症のある方などに起こりやすく、膀胱がパンパンになり、痛みが生じます。
つまり、鼻水や咳の症状はなかったのに抗ヒスタミン薬や抗コリン薬の入ったかぜ薬を飲んでしまい、余計な副作用被害にあってしまった、というのが今回のケースです。
市販のかぜ薬に使われている抗ヒスタミン薬、抗コリン薬には、多くの種類がありますが、市販薬製品の添付文書には、どの成分が抗ヒスタミン薬、抗コリン薬に当たるのか記載されていないことがほとんどですので、該当する成分名称を抜き出して、まとめてみました。
【抗ヒスタミン薬】
クレマスチンフマル酸塩
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
クロルフェニラミンマレイン酸塩
ジフェニルピラリン塩酸塩
ジフェンヒドラミン塩酸塩
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
マレイン酸カルビノキサミン(医療用医薬品では使われていません)
【抗コリン薬】
ベラドンナ総アルカロイド(医療用医薬品では使われていません)
ヨウ化イソプロパミド(医療用医薬品では使われていません)
市販のかぜ薬で使われる抗ヒスタミン薬、抗コリン薬には、病院や診療所で処方される医療用医薬品には使われていない成分もあります。市販のかぜ薬に詳しいのは、やはりドラッグストアや薬局の薬剤師などですので、抗ヒスタミン薬や抗コリン薬が入っているのかどうか、聞いてから購入するとよいと思います。知っておいていただきたい副作用は、尿閉以外にもありますので。
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