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夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか

医療・健康・介護のコラム

「僕のをあげる」と夫は言った 移植した腎臓から流れ出る尿に、思わずホロリ

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中1で発症 自分に「不良品」のレッテルを…

 私は中学1年生の時に慢性腎臓病を発症した。病名は「IgA腎症」。「(悪化すれば)いつかは透析」と言う町医師の表情は険しかった。私はいつしか自分に「不良品」のレッテルを貼るようになった。

 22歳の時に夫と出会い、その6年後に私たちは結婚した。プロポーズは私から。子どもを授かれないかもしれない、だけど結婚してくれる? というロマンティックではないプロポーズだったが、夫は飄々ひょうひょうとしてこう言った。

 「子どもがいたら楽しそうだね。でも優先順位は低いかな。夫婦で長生きして、老後に温泉旅行にでも出かけられたらいいね」

 結婚9年目、私は末期腎不全になった。「あなたの腎臓は東京オリンピックまではもたないでしょう」と医師に言われたのだ。できれば争いたかった。しかし、医師の見立てというものはそうそう間違わない。読みは見事に的中し、腎機能の数値は低下していった。私はひどく落ち込んだ。

 そんな時、「僕の腎臓をあげる」と申し出てくれたのは夫だった。最初は、「愛する人の体にメスを入れるなど、到底できっこない」と考えた。けれど医師は、慢性腎臓病の根本的治療に近いのは腎移植だと教えてくれた。それを聞いて、気持ちが高ぶった。25年間、私の持病である慢性腎臓病は「完治するのが難しい」と聞かされてきたからだ。

 夫と私は家族を巻き込み、時間をかけて話し合った。ようやく、一つの答えにたどり着く。「夫婦は運命共同体。幸せも苦しみも全部シェアしよう」。

手術前、実は夫も恐怖で震えていた

 「これは今だから言えることだけど……」

 手術から数か月がたったころ、夫が手術日の心境を語ってくれた。

 「実は、手術室に向かう道中、恐怖で足が震えてたんだよね」

 ええ、まさかと思った。私が記憶する限り、あの日の夫は終始、笑顔だったからだ。だまされた!

 でもね、実は、私も夫に言ってないことがある。夫が「ドナーになりたくない」と一言でも発すれば、手術当日であろうが、夫の意思を尊重しようと思っていた。健康な人が体にメスを入れるんだもの。当然怖いし、逃げ出したくもなるだろう。

 こんな“だまし合い”が、これからどのくらい続くのだろうか。この先、10年20年と夫の腎臓を長生きさせて、決着は二人で温泉にかりながら……なんてのも楽しそう。(もろずみはるか 医療コラムニスト)

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もろずみ・はるか

医療コラムニスト
 1980年、福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年に独立。ブックライターとしても活動し、編集協力した書籍に『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『バカ力』(ポプラ社)など。中学1年生の時に慢性腎臓病を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。

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