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夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか

医療・健康・介護のコラム

「僕のをあげる」と夫は言った 移植した腎臓から流れ出る尿に、思わずホロリ

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 目が覚めると、そこはHCU(高度治療室)だった。HCUならではのピリついた雰囲気と、経験したことのない痛みにおびえながら、真っ先に浮かんだのは夫の顔だった。夫はどこ? 無事なの? 早く会いたい……。けれど、絶対安静で体が動かせない。眼球をキョロキョロさせていると、父と義理の両親が視界に飛び込んできた。「大丈夫、あの子は元気だよ」――。

 2018年3月23日、夫(39)と私(38)は「夫婦間腎臓移植」(以下、腎移植)を受けた。結婚11年目の出来事だった。

じゃんじゃん流れる尿に夫を感じ

手術直前の夫と私。夫は終始、笑顔だったが…

 夫の姿を探した私だったが、その存在は、意外なもので感じることができた。尿だ。尿道カテーテルからじゃんじゃん流れ出す尿は、移植した夫の腎臓から作られたものだという。「しっかり出てますね。経過は順調ですよ」。看護師さんの言葉に、思わずホロリとさせられた。

 翌日、HCUから一般病棟に戻され、夫に再会することができた。「おーい、元気かい?」。夫は、私の病室まで歩いてきてくれた。穏やかな笑顔だったが、冷静に、腎臓を一つ失った自分の体を受け入れようとしているのがわかった。ドナーの手術は腹腔ふくくうきょうで行われたが、医師によると「若いと筋肉量が多く、痛みを感じやすい」そうで、術後1週間はつらそうにしていた。それでも泣きごとひとつ言わず、移植後3日で夫は退院。さらに1週間後に職場復帰を果たした。

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もろずみ・はるか

医療コラムニスト
 1980年、福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年に独立。ブックライターとしても活動し、編集協力した書籍に『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『バカ力』(ポプラ社)など。中学1年生の時に慢性腎臓病を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。

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