Dr.イワケンの「感染症のリアル」
医療・健康・介護のコラム
リンゴ可愛や、可愛やリンゴ でも可愛くはないリンゴ病
原因はパルボウイルス ほっぺたが真っ赤っかに
本稿執筆時点で東北や関東地方など東日本で流行しているのが、リンゴ病です。リンゴ病というのは、まあ、俗称で、医学的には伝染性紅斑と言います。紅斑というのは、皮膚が赤くなること。伝染性とは、うつること。感染症により、両方のほっぺたが真っ赤っかになるので、伝染性紅斑という病名なのですが、そのほっぺがリンゴのように赤いから、「リンゴ病」というわけです。伝染性紅斑はお世辞にも覚えやすい病名とは言えず、まあ面白くもおかしくもない名前です。それにひきかえ、リンゴ病とは、うまい名前を思いついたものですね(ぼくは昔から「正確な」医学用語とかに興味がない派なのです)。
さて、リンゴ病という名前は 可愛 らしいのですが、この感染症は名前ほど可愛くはありません。
感染症なので病原体がいるのですが、名前をパルボウイルスB19といいます。変な名前ですね。B19があるのだから、A5とかC9とかありそうですが、そういうものはなく、パルボウイルスB19だけが人に病気を起こすパルボウイルスです。このB19というのは実験で使っていたサンプルの名前で、パネルBの19番目のサンプルから見つかったのでこういう名前になったのです。へーんなの(Heegaard ED, Brown KE. Human Parvovirus B19. Clin Microbiol Rev. 2002 Jul;15(3):485-505)。見つかったのは1974年といいますから、比較的新発見、新顔のウイルスです。
子どもがかかりやすく、多くは自然に治る
リンゴ病の好発年齢は4、5歳。幼稚園児から学童くらいによく発症します。風邪っぽい症状とともにほっぺたが真っ赤っかになります。多くの場合は自然に治る軽い病気で済んでしまいます。
パルボウイルスに対する効果的なワクチンはありませんし、治療薬もありません。ほっぺが赤くなる前が感染期間で、赤いほっぺのときは他人に感染することもありません。 学校保健安全法でも登校基準はありますが、ほっぺが赤くなってリンゴ病かあ、と分かったときはもう感染性はなくなっていて学校を休む必要もないので、事実上、学校保健安全法を心配する必要はありません 。
ただし、この感染症は大人にも起きることがあります。特に女性で症状がはっきりすることが多くて、特徴はあちこちが痛くなる関節痛と、関節が腫れ上がる関節炎です。皮膚のほうは大人でははっきりしない薄い赤みが体のあちこちに見られます。「 刷毛 ではいたような」というくらい、境界のはっきりしない薄い皮疹で、研修医はよく見逃しています(ま、この感染症を知らないとベテランでも見逃しますが)。
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