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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

視野に「丸いすりガラス」出現 患者の訴えで初めてわかる新現象

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視野に「丸いすりガラス」出現 患者の訴えで初めてわかる新現象

視神経炎の回復過程で、十三夜の月のような形のものが……

 前回のコラムで紹介した「抗アクアポリン4抗体陽性」(細胞膜に水を通すたんぱく質の一種アクアポリン4に対する抗体がある)の視神経炎に3年前にかかった、40歳代の女性医師のお話をします。

 最悪の時点では、左目の矯正視力は0.1まで低下しましたが、幸い2度の副腎ステロイドの超大量投与療法によって回復し、何とか仕事に復帰できています。維持療法としてステロイドの少量投与は続けていますが、これまで再発もなく、順調な経過といえます。

 ところが、最近、左目の耳側の視野に満月の手前、十三夜の月くらいの丸いすりガラス状のものが出現し、邪魔をしていることを訴えました。

 右目はほぼ正常まで見え方が回復していますが、両目で見てもそれが気になるということは、右目ではカバーしきれない、左目の強い視覚ノイズがあると考えられます。

余分なものが見える「視覚陽性現象」は検査で把握できない

 視神経炎が回復してきたとき、視神経内に走る信号がどのようになっているかは、視力検査や視野検査の結果から医師は推定します。しかし、それで全てを表現できているかどうかは疑問です。

 たとえば後遺症として患者が時に訴える、「砂嵐が出没する」とか、「光が飛ぶ」といった現象(目が見えないのではなく、何か余分なものが見えることから「視覚陽性現象」と称している)は、検査では把握できません。

 このような本人しかわからない現象は、教科書にも書かれておらず、患者からの訴えで初めてわかるものです。彼女の「すりガラス」の現象は私も初めて聞いたもので、また新しい型の視覚陽性現象を勉強させてもらったなと思いました。

 この現象は、外界の光によって増強するようなので、遮光レンズの使用が助けになる可能性があることを説明しました。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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