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[老いをどこで]インタビュー(下)「互助」の輪 地域に広げよう

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「在宅」推進プロデューサーが重要…東京通信大学 高橋紘士教授

[老いをどこで]インタビュー(下)「互助」の輪 地域に広げよう

米田育広撮影

 住み慣れた地域で最期を迎えたい――。こんなお年寄りの思いに応えるにはどんな環境が必要なのか。この問題を長く研究してきた東京通信大学の高橋紘士教授(74)(地域ケア政策)に聞いた。

 ――高齢者を地域で支える体制は広がったか。

 在宅医療や訪問看護、介護のサービスが増え、医療と介護の連携が広がり始めている。認知症などで判断能力が乏しくなった人の権利を守る仕組みもあり、住民の見守りなどを受けながら自宅などで暮らす条件が整った地域が増えつつある。

 特に、夜間や緊急時も含めて、介護職員が家まで来てくれる24時間対応のサービスや、「通い」や「泊まり」「訪問」で介護や看護を一体的に利用できる多機能サービスが、サービスの要として機能している地域も出てきた。

 ――ただ、サービスを受けられない地域も多い。

 その通り。地域ごとに差が大きい。背景には、市町村の理解不足で利用者に知られていないことがある。存在が知られ、実際に使う人が増えて、「いいサービスだよね」という共感が広がれば、事業者が参入し、サービスも増えていくはず。施設を増やすのと同じ効果が期待できる。

 「遠くの施設や病院に入らなくても、この地域で最期を迎えられた」。こんな具体例を身近に感じてもらうことが欠かせない。

 ――カギを握るのは。

 地域を動かせるプロデューサーの存在だ。自治体職員や専門職はもちろん、医師、首長、事業者でもいい。「住み慣れたところで最期を迎えたい」という高齢者の本音に向き合い、医療、介護、行政など、地域の様々な関係者を巻き込んで、仕組みづくりを前に進められる人だ。

 そうした人材を意識的に育てようとしている自治体もある。地域の事情をよく知る職員が長く担当できるよう人事に配慮している。

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 ――高齢化で介護ニーズは今後も高まる。

 フレイル(加齢に伴う虚弱)予防を通して、介護が必要な状態になる時期を遅らせる活動を政策として強化すべきだ。予防には、「栄養」や「身体活動」(運動など)に加えて、「社会参加」が大きな役割を果たす。孤食よりも、会食する機会のある人の方が、抑うつ傾向が少ない。サロン活動に参加している人の方が、要介護認定率は低い。要は、豊かな人間関係があるかどうかだ。

 空き家などを活用して、高齢者が日頃から、地域の人たちと交流できる居場所も増やしたい。認知症や虚弱になっても関係が途切れないようにすることだ。

 ――生活に困窮する一人暮らしの高齢者の住まいが乏しいことが問題になっている。

 住み慣れた地域で最期を迎えるには、安心できる住まいがあることが前提だ。

 自宅での生活に不安があれば、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームという選択肢もある。しかし、都市部の場合、費用が高いため、低所得者は入居が難しい。人里離れた条件の悪い施設に入らざるを得ない実態もある。低廉で良質な住宅の確保を社会保障として位置づけてこなかったためだ。家賃を補助する政策が不十分だ。

 安心できる住まいがあって初めて生活の質を維持するとともに、本人の意欲の低下を防ぎ、自立した尊厳のある生活を送れる。

 ――個人の意識改革は。

 サービスの利用者であり、支え手でもある市民が当事者意識を持つことが欠かせない。誰でも、支援を必要とする生活を経験し、認知症になる可能性もあるからだ。独居でも、認知症の人でも地域で暮らし続けられるように、元気なうちは、見守りなどの地域の支え合い「互助」の輪に加わっていくことが大切だ。

  ◇たかはし・ひろし  東京通信大学人間福祉学部教授、高齢者住宅財団顧問。立教大学教授、同財団理事長などを歴任。厚生労働省の補助を受けて設置された「地域包括ケア研究会」のメンバーを務める。

 「老いをどこで」は、今回で終わります。

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