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老いをどこで

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[老いをどこで]インタビュー(上)最期迎える 温かな地域を

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通い、宿泊職員が訪問も…NPO法人「楽」理事長 柴田範子さん

[老いをどこで]インタビュー(上)最期迎える 温かな地域を

宮崎真撮影

 お年寄りができるだけ長く住み慣れた地域で暮らせるよう、国は「地域包括ケアシステム」と呼ばれる仕組み作りを急いでいる。現状や課題をどうとらえればいいのか。2回にわたってそのヒントを探る。初回は、川崎市で介護事業所を運営するNPO法人「楽」理事長の柴田範子さん(69)に意見を聞いた。

 ――高齢者が長く地域で暮らすために、目指す姿は。

 昔の日本のような、隣近所の人を気にかけられる関係だ。事業者など専門職だけが関わっても、高齢者の生活は豊かにはならない。地域の人との関わりを密にし、声をかけてもらうことが大事だ。

 運営する小規模多機能型居宅介護事業所では、地域の利用者が食事や入浴のサービスを受ける「通い」のほか、本人の希望に応じて、「宿泊」もできる。顔なじみの職員に自宅へ来てもらって身の回りの世話をしてもらう「訪問」も可能で、在宅介護を一体的に支える介護保険サービスの一つだ。

 近隣住民を対象に、食事会を月に1度、カフェを週に2度開いている。地域交流が進み、住民同士が姿を見ない人の体調を心配したり、利用者と職員が街を散歩して、近所の人に声をかけられたりと、協力し合える関係が出来てきた。

 認知症への理解も進み、 徘徊はいかい した人を見かけると警察などに連絡してくれ、見つかりやすくなった。地域包括ケアは難しく考えず、当たり前の生活の延長線上にあると考えればいい。

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 ――高齢者が自宅で最期を迎えたいと願っても、実際には、病院で亡くなる人が多い。

 家族の側に「病院にいれば安心だ」という病院信仰がある。でも、病院はあくまでも治療の場。必ずしも豊かで穏やかな最期を迎えられるわけではない。急性期病院は長くは入院できず、病院を転々とするケースもある。

 施設も介護職員の人手不足で大変な状況だ。70歳代の利用者の女性が家族の希望で施設に移ったが、1か月で自宅に戻ってきたことがある。入所先で話し相手もおらず、一日中ベッドに寝たまま。運動機能が低下してしまったという。

 女性は現在、家から私たちの事業所に通い、職員の介助を受けて歩くことができている。

 ――家族や医療・介護サービスを提供する事業者に求めることは。

 医療面でいうと、今は利用者が医師を選べる時代。「状況が悪化した時は施設がいいのではないか」という医師もいるが、家族や本人があくまでも地域での最期を望むのであれば、「最期まで在宅で大丈夫」と言ってくれる医師を選ぶことが大切だ。

 介護面では、体調の急変を恐れて、事業者が本人の意思に反して、救急車を呼ぶこともある。医師や看護師と連絡を取り合う体制や関係をつくり、在宅で 看取みと れるよう連携すべきだ。

 ――地域の役割は。

 とても重要だ。認知症になることも含めて、介護が必要になる状態を人ごとと思わずに気にしてほしい。近所に高齢者がいれば、声をかけてほしい。見守りの目が地域に広がれば、年を取っても安心して暮らせる地域につながると思う。

 「気が付いたら1週間前に独りで亡くなっていた」という状態ではなく、死後間もなく見つかるような地域づくりができればいい。

 お年寄り本人も、どこで最期を迎えたいのかを家族と話し合ってほしい。人任せではいけない。どうにもならなくなってから決めたのでは、家族の負担が大きくなってしまう。

  <地域包括ケアシステム>  高齢者が望む住まいで暮らし続けられるよう、医療や介護の専門職だけでなく、行政や地域住民、企業、ボランティアなども加わり、医療、介護、生活支援、介護予防を一体的に提供し、地域の特性に応じて支えていく仕組み。2011年に改正された介護保険法にこの考え方が盛り込まれた。

  ◇しばた・のりこ  ホームヘルパーを経て、2004年にNPO法人「楽」を設立し、現在は川崎市幸区で小規模多機能型居宅介護事業所「ひつじ雲」などを運営。全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会幹事も務める。元東洋大学准教授。

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