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冬の乾燥「かくれ脱水」注意…血栓できやすく、脳梗塞や心筋梗塞リスク
乾燥する冬は気づかないうちに体から水分が失われ、脱水症の前段階「かくれ脱水」になりやすい。脳 梗塞 や心筋梗塞が発症するリスクの一つとも考えられ、専門家は注意を呼びかけている。(福島憲佑)
済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜さんは、医療関係者でつくるグループ「教えて!『かくれ脱水』委員会」の副委員長を務める。かくれ脱水への注意を呼びかけるポスターを診察室に掲示し、「体の水分は気付かないうちに不足しがち。こまめな水分補給を心掛けましょう」と患者に説明する。
谷口さんによると、脱水症は体重の2~3%の水分が失われた状態を指すが、かくれ脱水では1%。体内の水分は汗のほか、皮膚からの蒸発などにより無意識のうちに失われ、乾燥する冬はこの傾向が強まる。
暖房の使用で屋外より湿度が10~20%低くなる室内では、さらに水分は失われやすい。住宅の気密性向上により、外気を取り込んで加湿する機会も減る。冬場は夏よりものどの渇きを感じにくく、水分を積極的に取らない人も多い。
気象庁によると、2017年に東京で観測した月別の平均湿度は、8月の83%に対し、12月は56%。最も低い2月で49%だった。谷口さんは「乾燥が進んで体内から水分が出てしまうと、血液が濃くドロドロの状態になり、血栓ができやすくなる。血管に血栓が詰まると、脳梗塞や心筋梗塞につながる」と話す。就寝中は水分を取らない一方で汗をかくため、脳梗塞は冬の明け方に起こりやすいという。
特に気を付けたいのは、のどの渇きを自覚しにくく、トイレが近くなることを気にして水分を控える高齢者だ。かくれ脱水の予防には、意識的な水分摂取が欠かせない。「コップ1杯でもいい。食事ごとに水分を取りましょう」と谷口さん。加湿器で、皮膚などからの水分の蒸発を抑えるのも有効という。
かくれ脱水の見つけ方や予防法は、同委員会の ホームページ へ。
入浴中も要注意、熱中症の原因に
入浴中のかくれ脱水も要注意だ。風呂に入ると汗をたくさんかき、体内の水分を失う。かくれ脱水の状態で入浴を続けると、血液の流れが悪くなって体内の熱を放出しにくくなり、冬でも熱中症にかかりやすい。
熱中症で意識障害を起こすと、湯船で溺れる危険性が高まる。東京都市大教授の早坂信哉さん(入浴医学)は、「入浴中にぼんやりしたり、眠くなったりしたら風呂から上がりましょう」と話す。
万が一、意識を失った家族を湯船で見つけた場合は、意識がない状態で湯船から引き上げるのは難しいため、風呂の栓を抜いて救急車を呼ぶ。
入浴時の湯の温度にも注意したい。年末年始の帰省や旅行で祖父母と孫が一緒に風呂に入るときは、湯の温度を子どもの適温に合わせる。高齢になると感覚が鈍くなり熱い風呂を好むが、子どもは体温調整がしにくく、熱中症になりやすい。
早坂さんは、「40度の湯に10分程度つかると、体への負担が少なく温かい状態が持続します」と話す。入浴の前後にかけて少なくとも麦茶など500~600ミリ・リットルを飲んで水分補給するとよいという。
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