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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

コラム

体重減らせばタイムは上がるが…10代女性の食事制限は生涯のリスク 危ない指導は「鉄剤注射」だけじゃない!

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 最近、陸上長距離選手における鉄剤注射の問題が話題になっています。しかし、女性とスポーツに関する問題は、鉄剤注射の話だけではありません。陸上長距離では体重の軽い方が有利なため、食事制限が行われていることもありますが、行き過ぎた食事制限により、「女性アスリートの三主徴」という大きな健康上の問題が生じる可能性があります。今回は、スポーツをしている女性選手のみでなく、その指導者や保護者の方にもぜひ知っておいてもらいたい話です。

 女子高校生、陸上長距離選手のケースです。

 高校1年生のNさんは、中学1年から陸上部に入り、長距離を専門としていました。高校に入り、指導者から「もっと痩せないと速く走れない」と言われ、食事量を大幅に減らしていました。長距離のタイムは徐々に上がりましたが、高校1年の夏から、月経が来ない状態が約5か月続きました。母に相談したところ、婦人科を受診しようと言われました。

「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」…女性アスリートの三主徴

体重減らせばタイムは上がるが…10代女性の食事制限は生涯のリスク 危ない指導は「鉄剤注射」だけじゃない!

 正常な月経は25~38日周期です。3か月以上月経が止まることを「続発性無月経」といいます。月経には、脳や卵巣から放出されるホルモンが大きく関係しています。

 スポーツをしている女性の無月経の原因として最も多いのは、運動量に見合った食事がとれていない「利用可能エネルギー不足」です。この状態が続くと、脳からのホルモン分泌が低下するため、「無月経」となります。そして、無月経に伴い、卵巣から分泌されるエストロゲンが低下すると「骨粗しょう症」になります。この「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」は、女性アスリートの三主徴と呼ばれます。

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 骨粗しょう症になると、骨折しやすくなることが知られています。女性アスリートの三主徴により無月経となると、ランニングをしていても、下肢の骨を疲労骨折するリスクが高くなります。

 また、女性は20歳頃までに最大骨量を獲得するため、10代で無月経が続き骨量が十分に増えていないと、生涯にわたり骨量が低いことになります。常に骨折のリスクが高い状態となるのです。

 女性アスリートの三主徴に至らないための予防が最も大切なのが分かります。

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Ozeki-7-pro

大関信武(おおぜき のぶたけ)

整形外科医・博士(医学)
一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事

1976年大阪府生まれ、兵庫県立川西緑台高校卒業。
2002年滋賀医科大学を卒業。2014年横浜市立大学大学院修了。横浜市立大学付属病院、横浜南共済病院、関東学院大学ラグビー部チームドクター、英国アバディーン大学研究員などを経て、2015年より東京医科歯科大学再生医療研究センター所属。現在、東京医科歯科大学付属病院スポーツ医学診療センター、八王子スポーツ整形外科などで診療。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。野球、空手、ラグビーなどを通じて、野球肘、肩関節脱臼、足関節靱帯損傷、骨折(鼻骨、手首、下腿)など自身が豊富なケガの経験を持つ。スポーツのケガを減らしたいとの思いで、2015年12月一般社団法人日本スポーツ医学検定機構を設立し、「 スポーツ医学検定 」を開催している。

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1件 のコメント

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スポーツにおける勝利の定義と社会的影響

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

目先の結果にフォーカスして、鉄剤を加えることも食事を抜くことも、どちらも程度問題と全体の調和の問題に個体差が絡みます。 同じ言葉で表現される行為...

目先の結果にフォーカスして、鉄剤を加えることも食事を抜くことも、どちらも程度問題と全体の調和の問題に個体差が絡みます。
同じ言葉で表現される行為でも潰れずいい結果を残す選手がいることが、情報の独り歩きを生んでいるのではないかと思います。

長期的視野に立った、全体像からの正論は、組織所属者は口にしづらいことですし、短期的結果へのフォーカスと矛盾します。
より多くの人の理解や感情を動かすということであれば、ますます難しくなります。
自組織の不利益を口にしたと思われると嫌われることもあります。

一方で、我々も年を取って忘れてしまうのは、若さゆえの感情のたぎりとその瞬間の勝利への執着です。
無理をすることで、無理をしない技術を覚えるのもまた現実にありますし、織り込んだうえで撤退のポイントを示す必要があります。

実際問題、社会人でスポーツの出来る人は一握りで、その中でも競技レベルのスポーツを出来る人間は一握りです(必ずしも幸福だけではない)。
だからこそ、学生スポーツが美しい部分もあり、悪意や無知からではなくても種々の行き過ぎも起こります。

そういう意味でも、実は普及活動や構造改革の中での局地戦の問題と捉えるのが大事なのではないかと思います。
もしも、中高生での実績より実力を大事にしてくれるスポーツ界に変化すれば、より中長期的な視点でのスポーツや栄養の指導が可能です。
救急逼迫を避けるための予防医学の普及と一緒です。

昨今はサッカー界も背が高くて足の速い選手ばかりですが、そんな選手を見て、日本の普通の子供は夢を持って努力するでしょうか?

安易なドーピングや正負の食事ドーピングに走らせているのは構造問題ですから、スポーツ界も色々な仕組みを考えてくれれば、医者とかトレーナーとかいう子供からすれば興味のない人間の言葉よりも心に響くと思います。
漫画家の先生方にも期待しています。

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