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僕、認知症です~丹野智文44歳のノート

コラム

テーブルにヘビが出た!…VRで認知症の人になってみる

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スマホで手軽に疑似体験

 皆さんも、バーチャルリアリティー(VR)という言葉を聞いたことがあると思います。日本語で「仮想現実」という通り、コンピューターで架空の世界を作り出したり、遠く離れた場所を再現したりして、実際にそこにいるような感覚を体験できるものです。最近は、VRの映像と音声をスマートフォンで再生できるようになり、ぐっと身近になりました。

 この新しい技術を使って、認知症の人と同じ体験ができるコンテンツを制作している企業が東京にあります。サービス付き高齢者向け住宅の運営などを行っているシルバーウッドという会社です。

レビー小体型認知症の幻視を体験するVRの画面(シルバーウッド提供)

リアルな幻視に混乱

 レビ―小体型認知症を疑似体験できる作品を見せてもらった時は、驚きました。実際には存在しないものが見える幻視という症状を再現した映像がとてもリアルで、ケーキにウジのような虫がびっしりとついていたり、テーブルの上をうねうねとヘビがはったりするので、ドキッとします。ところが、そのヘビに映像の中の人が何げなく触れると、一瞬でスマホのケーブルに変わります。そこで初めて「幻視だったんだ」と分かるのです。

 ソファで談笑する仲間の後ろには、無表情でうずくまる男性の姿が。どちらもはっきりと見えるので、誰が幻で誰が実在するのか、区別がつきません。

 これ、かなり怖いです。混乱して、気が休まる時がありません。私自身はアルツハイマー型認知症ですが、幻視については、レビ―小体型の当事者から話を聞いて、なんとなくは分かっていました。しかし、人の話を聞いて想像するのと、自分の目で見るのとは大違いです。「百聞は一見にしかず」とは、このことなんじゃないかと思いました。

「ここ、どこ?」走る電車の中で焦り

 認知症の人が電車の中で居眠りをしてしまい、目が覚めたらどこを走っているのかが分からない――という作品もありました。まさに私自身が日頃、体験していることだったので、「本当にこんな感じなんだよ!」と、思わず声を上げてしまいました。私の場合、居眠りしているわけではないのに、気がつくとどこにいるか分からなくなっていることが多いのですが。

 乗り換えの駅はもう過ぎてしまったのか? この駅で降りた方がいいのかな? 迷っている間も電車はどんどん進んでしまうので、焦りと不安が募ります。その感覚が、とても分かりやすく表現されているのです。

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丹野智文(たんの・ともふみ)

 おれんじドア実行委員会代表

 1974年、宮城県生まれ。東北学院大学(仙台市)を卒業後、県内のトヨタ系列の自動車販売会社に就職。トップセールスマンとして活躍していた2013年、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断を受ける。同年、「認知症の人と家族の会宮城県支部」の「若年認知症のつどい『翼』」に参加。14年には、全国の認知症の仲間とともに、国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(現・一般社団法人「日本認知症本人ワーキンググループ」)を設立した。15年から、認知症の人が、不安を持つ当事者の相談を受ける「おれんじドア」を仙台市内で毎月、開いている。著書に、「丹野智文 笑顔で生きる -認知症とともに-」(文芸春秋)。

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