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妊娠・育児・性の悩み

高級車2台買えた!? 不妊治療の驚愕の費用

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不妊は「隠すべき」「劣っている」こと? 自分を追い詰めないで

 大手保険会社に勤めるNさん(43)は、妊活8年目。結婚して数年たってもなかなか妊娠しないので、「一度検査をした方がいいかも」と友人からアドバイスを受け、近所のクリニックを訪れました。特に原因は見つからず、まずタイミング療法を試しましたが妊娠せず、人工授精、さらに体外受精へと治療が進みました。

軽い気持ちで始めた不妊治療 「次こそは」とだんだんムキに

 「最初は軽い気持ちでした。病院に行けばすぐできると思っていたのにできなくて……。それで次こそはと思ううちに、だんだんムキになってしまった気がします。毎月、生理のたびに気持ちがガクッと落ち込んで……。何でダメなんだろうって」

 Nさんは、治療以外に運動や食べ物にも気を使い、できることはやっているといいます。それだけに努力が実らなかったときの落ち込みは相当なもので、数日間は涙が止まらなくなるそうです。

 「もう8年も続けていると思うと、本当にびっくり。何をやっているんだろうと自分でも思います。でも夫も私も一人っ子。子供ができないと、双方の両親がどれだけがっかりするかと思うと、今私が投げ出しちゃいけないとも思う。一方で、もう治療を続けていても希望が持てず、いつやめるべきなんだろうと考えちゃうんですよね」

費用は8年で1000万円超え 「全部ドブに捨てた」という無力感

 Nさんの悩みは精神的なものだけではありません。長年治療を続けていると、経済的な負担も大きくのしかかってきます。

 「年末は本当に憂鬱ゆううつです。医療費を計算すると、1年でこんなに使ったのかと愕然がくぜんとします。8年分を合わせると軽く1000万円は超えています。驚きですよね。憧れの高級車が2台も買える金額です。それを全部ドブに捨ててしまったのかと思うと、何とも言えない無力感におそわれて……」とNさんは目を伏せます。

 確かに不妊治療は自費診療で、金額も高額です。Nさんの場合、治療が長引き、かなり経済的負担が大きくなりましたが、「まれなケース」でもないのです。実際、私の周囲の友人の中にも、「1000万円超え」は両手ではとても足りないほどいます。1回50万円の体外受精を年4回したら200万円。5年間続けたら、その金額になってしまうわけですから。

 今、NPO法人Fineでは「不妊治療と経済的負担に関するアンケート2018」を実施しています。(2019年1月7日終了予定。URL:https://questant.jp/q/WPWNJMQP) これは定点観測的なもので、経済的負担についてのアンケートは3回目になります。2回目の結果では、通院開始からの治療費の総額で最多の回答は「100万~200万円」で、約25%でした。しかし、「500万円以上」と答えた人も約5%いました。20人に1人は、それぐらいの金額をかけて(しまって)いるということです。

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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