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未病シンポジウム「人生100年時代の未病最前線」

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[未病シンポジウム](2)病気リスクを見える化

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東京大学教授・鄭雄一氏

[未病シンポジウム](2)病気リスクを見える化

 東京大学で、未病に関するプロジェクト「自分で守る健康社会」を医学や工学、化学の研究者らと進めています。既存の分野や組織の壁を取り払い、あるべき将来をまず思い浮かべ、実用化が目指せるテーマに積極的に取り組んでいます。企業にもパートナーとして参画を促しています。

 これからは、若者と高齢者の区別は徐々になくなるでしょう。高齢者も社会を支える時代になります。そうなると、自分の健康を自分で守ることが大切になってくると考えました。

 医療では、入院と通院を減らし、家庭で健康で過ごせる時間をなるべく延ばそうとするのが、あるべき将来です。そのために一人一人の意識と行動をどう変えていくかを研究しています。

 キーワードの一つが「効果の見える化」です。健診結果などのビッグデータを活用し、将来の病気のなりやすさを数値で示す。人工知能(AI)やVR(仮想現実・バーチャルリアリティー)といった技術を駆使し、例えば「3年後にメタボになるリスクは80%」などと伝えて、対処法も助言する。1回きりではなく、こうした評価を重ねます。

 健康リテラシーを高め、共感して励まし合える仲間作りの支援も進め、一人一人が行動を良い方向に変えるよう促します。

 今、新たな挑戦の準備を始めています。

 神奈川県立保健福祉大学大学院に来年4月、ヘルスイノベーション研究科が設置され、研究科長に就任する予定です。未病の考え方を実践するための人材育成と研究の拠点を目指します。

 人材は、科学的な視点や知識はもちろん、新しい考え方を社会に根付かせるために努力する姿勢が求められます。

 研究では、県立であることを強みに、県行政と密接に連携し、地域社会で実践していく体制を整えます。企業とも連携し、健康関連産業・サービス技術を開発する、新たな産業の創出も進めます。

 未病という新しい健康観を広めるには、確かな理念に加え、指標が不可欠です。先ほどお話ししたような、個々の「今の状態」と「将来の病気のリスク」を数値でわかりやすく示すことが大切です。この2年間、有識者で、こうした「未病指標」のあり方について議論を重ね、いくつかの要件が見えてきました。

 一人一人に対する指標で、一定の科学的根拠を持ち、費用対効果も高い。行動を見直して努力すれば、数値は変わっていく。美しく年を重ねるための意欲を引き出す未来予測です。

 指標は本来、個人に向けた開発ですが、企業なら商品開発に、自治体なら地域の課題分析にも使えそうです。こうした応用も視野に入れて、役立つ指標作りを進めていきます。

 ◇てい・ゆういち 1964年生まれ。東京大学医学部卒業後、米・ハーバード大学医学部助教授などを経て、2007年から現職。専門は骨・軟骨の生物学・再生医学、バイオマテリアル工学。

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