宋美玄のママライフ実況中継
医療・健康・介護のコラム
炎上する「妊婦加算」は本当に廃止すべきか?
医療機関が妊婦を診察した際に発生する妊婦加算が「妊娠税」などと呼ばれて物議を醸しています。具体的内容についての疑義は国会でも答弁され、「廃止を検討する」という報道まで出てきています。
「加算」というのは、医療側に手間や負担のかかる診療に対して設けられたプラス料金のことで、時間外加算や乳幼児加算などなど、さまざまな種類があります。厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(通称・中医協)が協議して決めます。妊婦加算もその一つで、初診、再診に分けて加算額が決められ、通常はその3割を妊婦本人が自己負担します。
妊婦は生理学的に非妊婦と異なることが多く、また薬や検査の内容にも気をつけるべき点があるため、診療に通常より手間がかかることに異論はないでしょう。それに対する報酬として、妊婦加算は作られました。ところが、実際に加算が始まってから、「妊娠税だ」「少子化対策に逆行する」などと言われて炎上したのです。
妊婦への診療を手厚くするのが目的
妊婦さんを日常的に診察している私から見て、大きな問題なのは、妊婦さんが何らかの症状を訴えて産科以外の診療科にかかった場合、診療拒否に近い目に遭うことが多いことです。
妊娠中というのは、順調であっても1分後に何が起こるか分かりません。生まれてくる赤ちゃんに先天的な病気がある確率も、3~4%あります。検査や投薬をして、絶対に妊娠や赤ちゃんに影響がないとは言えないし、何かが起こった場合、行った診療との因果関係の有無について厳密に証明することなどできません。昨今の、何かあったら医療ミスとして責められかねない風潮を考えると、妊婦への診療を避ける医師が出てくるのも分かります。
以前は、そのようなリスクを抱えながら診療しても、診療報酬の加算は全くありませんでした。そのため、妊婦加算という「ファイトマネー」を設けることで、妊婦を丁寧に診察するモチベーションにつなげていく、というのが制度の本来の目的でした。
ところが、妊婦加算が施行されて出てきたのは、「ろくに診てもらえなかったのに、加算を取られた」という声でした。制度ができても、すぐに医療行動がガラッと変わるはずもないため、私は過渡期に出てくる問題だと考えていたのです。しかし、批判の声がここまで大きくなると、世論に耐えきれず制度はなくなってしまうのでしょうか。
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>妊婦の医療負担を減らした上で、医療機関が妊婦を丁寧に診る
じゃあ妊婦加算せずに,妊婦の診療に対する補助金を病院に与えれば良いのでは?
どうして妊婦加算して「妊婦医療証」で減額するなんて手間をかける必要がある?
しかも現状は妊婦加算しかないから炎上したんじゃないの?
この記事は全く筋が通っていない。
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「少子化は国難、消費税の使い道を社会保障にする」と言って解散選挙までやったのに額面だけ見れば妊婦に負担増
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妊娠中、胃が痛くなった時、産婦人科では内科に行ったかと聞かれ、内科では産婦人科に行くよう言われたことがありました。
妊婦加算によって、医療の現場に変化があるのなら、それはとても良いことだと思います。加算で払うお金も実際には微々たるものであることが多いでしょう。
しかし、妊婦健診など、補助が出ていても毎回(多い時は1万円以上)足はでて、予想以上に妊娠にはお金がかかります。そこに、またお金を払わなければならない、というのも反発を招いた一因だと思います。
さらに、今回の妊婦加算が物議を醸しているのは、別に複雑な背景があるのではと思っています。
よく話題にのぼりますが、妊娠から産後まで、母親は常に謝り続けているような状況があります。妊娠して職場に迷惑をかけて申し訳ないと感じる、産後も前のようなポジションで働けない、街中でもマタニティマークをつけていたことで被害にあった事例などもあり、ビクビクしながら過ごすなど、社会に温かく受け入れてもらえているとは到底思えないと感じる方も多いのではないでしょうか。
勿論、配慮してくださる方もたくさんいらっしゃいますが、まだまだ安心して妊娠できる環境とはいえないと思います。
今回の妊婦加算は、妊婦さん達にとって、自分達は招かれざる厄介な客なのだと、公に言われたような気がしたのではないでしょうか。
宋先生がおっしゃるように、妊婦さんの医療費負担を減らせば良いのだと思います。それは、単に金銭的な面で負担を減らすということよりも、妊婦さん達に招かれざる客ではなく、ウェルカムな存在なのだと示して精神的負担を軽減するという点において、大きな効能があるのではないでしょうか。
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