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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

介護・シニア

5歳児VS認知症のじいちゃん…火花散るチャンネル争い

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「ほかの大人とちょっと違って面白い」

 そういえば、たー君は普段から、父さん(じいちゃん)に対して他の大人とは違う対応をします。たとえば、横を向いている間に自分の分のお菓子をじいちゃんが食べちゃっても、自分が遊んでいたおもちゃにじいちゃんの方が夢中になり放っておかれても(5歳の男の子に対してヒドイことばかりですが、これが我が家の「認知症介護あるある・孫バージョン」)、私や父親のヒロさんがそんなことをしたら、泣いたり、すねたりするようなことも、じいちゃんだと怒ったりしないのです。

 「なぜ、じいちゃんだとイヤなことをされても怒らないのか?」。不思議に思った私は、たー君にインタビューしてみました。すると……。

 「じいちゃんって、ほかの大人とちょっと違って、お友達みたいだから。面白いから一緒に遊ぶのが好きなの。あ、でも、じいちゃんがお出掛け(デイサービス)から帰って来て、夕ご飯の時間までしか、一緒に遊びたくないけど」

でも一緒に遊ぶのは2時間が限界

 なるほど~。誰が教えたわけではないけど、自分に正直過ぎる姿勢でたー君と向き合っている(?)父さんのことを、たー君なりの視点で理解しているようです。他の大人と違って、予想外の行動をとる父さんは、面白いのかもしれません。

 さらに、争いごとが苦手で平和主義者のたー君は、友達におもちゃを横取りされても怒ったりしません(ワガママを聞いてくれる大人にはそうでないけど)。だから、じいちゃんに理不尽なことをされても、自分の要望をすんなり聞いてくれる人ではないと肌で感じて、争わない姿勢を取っているのかもしれません。

 ただ、そこはやっぱり5歳児。自由すぎるじいちゃんとずっと遊ぶのは疲れてしまうのか。父さんがデイサービスから帰宅して、夕飯を食べる前までの2時間ぐらいが、一緒に遊んでいて楽しい時間の限界とのことでした。5歳児らしく、正直でよろしい!……って、大人にはなかなか難しい、自分の限界を知って無理のない範囲で介護する姿勢を5歳児に教えられたような。

「じいちゃん像」成長したらどう変わる?

 普段の様子を見ていると、友達のように仲良く遊びながらも、母さんの配慮などもあり(このお話は次回)父さんを尊重し、決して軽く見ているようなそぶりはありません。私としては、そのことに安心しつつ、5歳のたー君なりに認知症の父さんとの付き合い方を心得ていることに驚きました。そして、年齢とともに変化していくであろう父さんとの今後の関係に興味が湧いてきました。これからも折に触れて、たー君が応えてくれる間は、そのときどきに抱いている「じいちゃん像」についてインタビューをしていこうと思いました。(岡崎杏里 ライター)

 登場人物の紹介はこちら

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 23歳で少女漫画誌でデビュー。現在は、生まれ育った北海道で夫と暮らす。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、つらい治療を乗り越えて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載中。

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