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思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子

医療・健康・介護のコラム

第2部「うつ状態」(上)両親の確執にさらされ、学校でも無気力…目標見失って引きこもりに

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青白い顔で「気力が出ない。何もしたくない」と

 前回触れたように、子どもの中学生時代を「初期思春期」と呼ぶ。親離れが始まることで、家庭内で培われてきた価値観が、仲間との関係を通じて自分の新しいものへと作り変わっていく。その新しい価値観を「自我理想」と呼び、思春期の発達課題の一つとなる。

 自我理想とは、「自分が将来何をしたいのか」「どんな人間になりたいのか」など、子どもが描く願いや夢のこと。「サッカー選手になりたい」「アイドルになりたい」など、幼児期に初めて将来の夢の原型が生まれます。

 やがて、同性の仲間との交流を経て、より現実的で自分に合った夢へと変わっていきます。友人と語り合ったり、比較し合ったりすることで、「自分は何がしたいのか」「自分には何ができるのか」などの考えが生まれます。過去から現在、そして未来に向けて「自分がなりたいイメージ」が「絵空事」から「がんばればできること」になっていくわけです。

 より現実的なものへと書き換えられた将来の夢があるからこそ、「日々の努力をする」「受験勉強に励む」「部活をがんばる」など、実現に向けた努力が可能になります。

 都内に住む中学2年生B君は、中学受験の時、志望校に受からなかったため、高校受験でのリベンジを誓って、勉強に励んでいました。将来は理系の大学に進んで勉強したいとの目標があり、1年生まではきちんと通学して、部活にも積極的に参加していました。ところが、2年生に進級してから、「部活の友達と合わない。学校の雰囲気にもなじめない」と、時々学校を休むようになりました。2学期になると、とうとう学校には行かなくなり、自分の部屋からも出てこなくなりました。部屋に運ばれた食事にも手をつけなくなったため、心配した母親がクリニックに連れてきました。

 初診時には明らかなうつ状態で、「気力が出ない。何もしたくない」と青白い顔でつぶやくだけでした。そこで時間をかけて、じっくりと話を聞いたところ、ぽつりぽつりと自分の心境を話し始めました。どうやら、B君が引きこもってしまった大きなきっかけは学校ではなく、家庭内にあるようでした。

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shisyunki-prof200

せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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