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思春期の子どもを持つあなたに

コラム

第2部「うつ状態」(上)両親の確執にさらされ、学校でも無気力…目標見失って引きこもりに

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大人のモデルであった両親が…

 いわゆる「うつ病」と「うつ状態(抑うつ)」は区別して考える必要がある。うつ病は「病名」であり、脳内の神経伝達をスムーズにする抗うつ薬が使われることが多い。

 うつ状態は、気分の落ち込みや意欲の低下などのうつ症状がみられる「状態」を指す。うつ状態はうつ病以外にもさまざまな原因が認められる。例えば、ひどくショックな出来事があれば気分が落ち込んだり、やる気が出なくなるのは正常な反応としてのうつ状態だ。うつ状態になっている原因に応じて、治療を行う必要がある。

 B君には、自宅の近所に住む祖母がいました。毎日のようにB君の家にやってきては、母親にあれこれ指図したり、父親の世話を焼いたりしていました。父親は祖母にとって、自慢の一人息子だったのです。母親は祖母に遠慮して、抗議ができませんでした。父親に不満を言っても取り合ってもらえないばかりか、むしろ祖母の肩をもつことが多かったため、夫婦げんかが絶えませんでした。

 そのために母親はB君がまだ小さい頃から愚痴をこぼし、父親については「あんな人と結婚しなければよかった」「あなたのお父さんは本当にひどい人だ」と言い続けてきました。B君はそんな母親を励ましたり、慰めたりする立場でした。

 B君が不登校になる前夜にも、両親の間で激しいけんかがありました。驚いたB君がリビングルームに行くと、母親は「こんな家から出ていってやる。Bも一緒に行こう」と泣き叫び、父親の前で両親のどちらが悪いのかを無理やり言わせようとしました。その場ではB君は何も言わず、以来、自分の部屋にこもるようになったそうです。

 B君は、幼い頃から両親の確執にしょっちゅうさらされており、母親から一方的に父親の悪口を聞かされてきました。とはいえ、大切な両親です。心の中では父親を大切にしたい思いもあったわけです。それがB君の心の中で大きな葛藤となり、精神を不安定な状態にしていました。身近な大人のモデルであった両親が頻繁にけんかをしていることで、将来の自分にも明るいものを見いだせなくなっていたのです。

 家族内の問題は、もちろん学校生活にも響きます。B君の心の中の多くは両親を巡る葛藤が占め、新しい学年になった後に、なかなか親しい仲間関係を築くことができなくなりました。「志望校の生徒になりたい」という非常に身近な自我理想を持っていたにもかかわらず、どうして急に無気力状態になってしまったのでしょうか。(関谷秀子 精神科医)(つづく)

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せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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