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風疹、西日本でも拡大…「空白世代」の予防接種急務

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風疹、西日本でも拡大…「空白世代」の予防接種急務

風疹に免疫があるかを調べる抗体検査のため採血する男性(大阪市福島区で)=浜井孝幸撮影

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 風疹が5年ぶりに流行している。国立感染症研究所の調べ(2日まで)によると、今年の全国の感染者数は2454人で、大阪府105人、兵庫県41人と、西日本へも広がりを見せる。免疫のない成人男性へのワクチン接種が急務だ。(佐々木栄)

 

首都圏から流行

 

 神戸市で9日、日本ワクチン学会の風疹緊急セミナーが開かれた。医療者らが集まる集会で、長女(6)が先天性風疹症候群(CRS)で生まれた同市の西村麻依子さん(35)が登壇し「一日も早く風疹の流行をなくして」と訴えた。

 風疹は夏頃から首都圏で増え始めた。感染者の8割超が成人男性(1999人)なのが特徴で、中でも30~40歳代が6割を占める。米国やタイは、妊婦に日本への渡航の自粛を勧告した。

 風疹は1度のワクチン接種で、95%の人に免疫がつく。だが40歳以上の男性は自主的にワクチンを受けていない限り、一度も接種機会がない。今回、感染者のワクチン接種歴は「なし」「不明」の合計が9割で、風疹に免疫のない層を中心に流行が拡大した。

 

苦しむ母親たち

 

 岐阜市の 可児かに 佳代さん(64)の長女は1982年にCRSで生まれ、18歳で亡くなった。ワクチンを受ける機会がなかった世代だが、「自分のせいで、娘につらい思いをさせた」と、今も自責の念にかられる。

 女性は現在の56歳以下から接種対象になっているが、男性は39歳以下からで、接種が遅れた。風疹は散発的な流行を繰り返し、2003~04年の流行後、国は「(対策に)一刻の猶予もない」と緊急宣言をまとめたが、12~13年にも大流行を許し、CRSの子どもが全国で45人生まれた。

 可児さんは13年、西村さんらと「風疹をなくそうの会」を設立。国内の風疹を根絶するため、会はワクチンの空白世代である成人男性への接種を、国に要望し続けてきた。

 「5年間訴えたのに制度は変わらず、声は届かなかった。女性と子どもに悲しい思いをさせるのは、もう終わりにしてほしい」

 

「国は行程表を」

 

 国が接種空白世代の具体的な対策を公表したのは11日。現在39~56歳の男性1600万人のうち、感染歴がないなどの理由で免疫がない約300万人に、3年間で無料接種する計画だ。

 だが風疹用ワクチンの生産は年間約270万本で、工場のラインの関係で急な増産は難しい。子どもに約200万本が接種されており、成人分は限られている。このため成人男性は先に血液の抗体検査を行い、免疫がない男性を絞り込むという苦肉の策だ。

 国は20年の東京五輪・パラリンピックまでに、風疹ウイルスが国内に常在しない「排除」を目標としているが、極めて厳しい。風疹の排除を達成した国で、接種前に抗体検査を行ったケースはないという。

 検査と接種の2段階方式について、大阪小児科医会の藤岡雅司理事は「1600万人の男性にどう検査を行い、接種につなげるのか。国は具体的な行程表を公表すべきだ」と指摘する。

          ◇

【風疹】  風疹ウイルスが原因。症状は発疹や発熱などで、感染しても発症しない人もいる。妊婦が感染すると目や耳、心臓に障害のある先天性風疹症候群の子どもが生まれることがある。

 

自治体・保健所に問い合わせを

 

 妊娠中は、風疹のワクチンを打てない。妊娠前に接種を済ませるか、家族が打って風疹ウイルスを家に持ち込まないのが理想だ。

 ワクチンは自費で1回1万円ほどかかり、流行すると数が不足する。自治体や保健所に対応を問い合わせるとよい。大阪市は抗体検査数を増やし、土曜や平日夜も検査の対応を始めたが、今月分は7日時点でほぼ埋まった。

 大阪府箕面市の倉田哲郎市長(44)は11月、空白世代の全員に接種費用を一部助成する案を公表、対策に一石を投じた。「危険性が高い世代の市民は7万人。特に男性は人口の多い大阪市や首都圏との往来も多く、市民のリスクになると考えた」と説明する。国の方針変更で対応を再考中だが、「市役所は市内最大の事業所。定期健診で抗体検査を行うなど工夫し、機運を盛り上げたい」と話す。

 独自対策に取り組む企業もある。静岡県掛川市の自動車部品メーカー「キャタラー」は3年前に複数の社員が感染し、妊娠中の社員の出勤免除や免疫がない社員の出張自粛を行った。社員には接種費用の7割を助成する。河合裕直取締役(60)は「感染者が出れば取引先に迷惑をかけ、社員や家族も不安になる。対策は企業の社会的責任」と話す。

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