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妊娠・育児・性の悩み

第4部[あしたの夫婦像]村木厚子さんに聞く(上)今できることに最善を

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 元厚生労働次官の村木厚子さん(62)は、公務員生活の多くを女性が働きやすい環境作りに携わってきた。時に家庭との両立に悩みながらも、夫や先輩に励まされて官僚トップまで務めた村木さんの話には、共働きを続けるヒントがたくさんある。年間連載を締めくくるにあたり、2回にわたって紹介する。

優先順位決めたら迷わず

 

第4部[あしたの夫婦像](3) 村木厚子さんに聞く 今できることに最善を

吉川綾美撮影

 ――地元の高知大を卒業後、労働省(現厚生労働省)に入省。26歳で同期入省の夫と結婚し、29歳で長女、35歳で次女を出産した。

 男女雇用機会均等法がない時代で、高知では4年制大学を卒業した女子学生を採る会社はほぼなかった。「自分は自分で養いたい」と思っていたので、公務員を選びました。

 私が入った年は、技術系を除くと女性のキャリアは全省庁で7人。そんな中、伝統的に女性を採用してきた労働省には子育てを経験した先輩が結構いた。ただうちのように両方の実家が地方というのは珍しく、「最も悲惨なケース」と言われたものです。でも「あなたたちが両立できたら、後の人も夫婦だけでやれるから」と応援してもらった。たくさんアドバイスをくれ、何度も「何とかなるから」って。

 夫とは友達関係からスタートしているからか、家事も育児も何でもしてくれた。早く帰宅した方がやる。彼に言われていたのは「俺を褒めれば木にも登る」。褒めるのも難しいんですけど、仕方なくね。そして、「どうしても仕事が嫌になったら、辞めていいことにしよう」と言い合っていました。それはすごく気を楽にしますよね。ひとりで一家を養っていると、なかなかそうはできませんから。

 ――長女が2歳の時、島根労働基準局(現島根労働局)に1年半の子連れ赴任も経験。東京に戻ってからは、保育ママに子どもを預け、深夜まで働いた。

 上司は「異動時期をずらそうか」と言ってくれたけど、夫が同期なので同じ時期に行った方が別居期間が短いだろう、と。出張の時などのために、保育所以外に子どもを預かってくれるお宅も探しました。島根では皆さんに親切にしていただき、今もお付き合いがあります。

 5歳の長女が良性の小児てんかんを発症した時は、初めて仕事を辞めるか悩みました。発作は寝入りばなに起きやすく、そばにいないといけない。部下や上司より真っ先に職場を出るのは、肩身が狭くて。でも、親に代わりはいない。「もう少し頑張って、ダメなら辞めればいい」。そう思ったら、面白いほど開き直れた。

 優先順位を整理した後は迷いませんでした。職場では仕事に集中し、ほかの人に業務を割り振るなど自分の荷物を少し軽くできるようになった。やがて娘の発作も薬でコントロールできるようになりました。

 だから部下には「くよくよするな」と言ってきました。「職場に迷惑をかけているかも」「いいお母さんではないのでは」という悩み方は、何も生み出さない。短時間でどう効率良く働くか、子どもと過ごすか。「どうしても悩みたかったら、生産的に悩んでくれ」とね。100の力のある人が何らかの理由で70しか発揮できない時、悩むとその力が50、40になる。「その時の100%」をできていればいいんです。

 ――2009年、雇用均等・児童家庭局長だった時に郵便不正事件に巻き込まれ、 冤罪えんざい で逮捕された。164日の勾留を耐え抜いた。

 信じてくれる家族の存在は大きかった。あとね、子育てしながら働いていると、色んなことが起きる。子どもが熱を出した時、「プールで長く遊ばせすぎた」とか思い出しても仕方ない。それより、仕事やお迎えをどうするか、今やれることを考える。だから、なぜ逮捕されたのかはちょっと横に置いておいた。拘置所でできることは、「体調を崩さない」「裁判資料が届いたら必死で読む」の二つしかない。そう思ったら、すごく落ち着いた。

 振り返ると、仕事と子育てで四苦八苦して得た知恵が全部役に立ったと思うんです。

  むらき・あつこ  1955年、高知県生まれ。78年、労働省(現厚生労働省)に入省し、女性や障害者政策などを担当した。2009年、郵便不正事件で大阪地検特捜部に逮捕されたが、10年に無罪が確定し復職。13年に厚労次官となり、15年に退官。困難を抱える若い女性を支える「若草プロジェクト」呼びかけ人などを務める。

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 〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「共に働く」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。ツイッターは https://twitter.com/o_yomi_life_edu

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結婚、出産後も働き続ける女性が増える一方、育児との両立の難しさやキャリアアップを描きにくい現状はあまり変わりません。女性が真に活躍するために何が求められているのか。現代の「共働き事情」を描きます。

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