共に働く
医療・健康・介護のコラム
第4部[あしたの夫婦像](1)仕事も育児も お互い主役
キャリア形成 協力カギ
共働きが広がる中、若い世代を中心に仕事と家庭を柔軟にやりくりする夫婦が増える一方で、社会に出る世代には両立への不安も根強い。これからの共働き社会に求められることは何だろう。連載「共に働く」の最終章となる第4部では、新しい夫婦像や学生の姿を通して探ってみたい。
大阪府の上田明紀さん(34)と妻の有希さん(34)は、素材メーカーの研究開発部門で共に働く。週の半分は、明紀さんが長女(4)と長男(1)を保育所に迎えに行き、夕飯を準備する。「その日は残って時間のかかる実験ができる」と有希さんはほほえむ。
「子どもが幼い間は私の仕事時間が短くなるんだろうな」と思っていた有希さん。長女の育児休業後は毎日、定時の午後5時で仕事を切り上げていた。ところが数か月した頃、明紀さんが「もう少し俺が早く帰る日を増やす。最終的に5対5の家事分担を目指そう」と言い出した。
「そんなの無理でしょ」という有希さんの予想に反し、明紀さんは効率良く仕事をするよう心がけ、週に1、2日と定時退社を始めた。「自分よりいいところが妻にはたくさんある。働かないともったいない」。そんな明紀さんに当初、有希さんは「あなた男性なのにそれでいいの?」とひっかかりを感じたという。
けれど、抵抗感を抱く理由を考えるうち、「『男だから仕事すべきだ』と思うことは、『女だから家事をしてくれ』というのと同じ」と気づいた。「仕事も育児もお互いが『主役』でありたい」。2人の今の思いだ。
結婚後 語学留学
結婚・出産期に女性の労働力人口が減少するM字カーブの底は、この40年間で大幅に改善した。
総務省の労働力調査によると、25~29歳の労働力率は1977年の46%から2017年には82%、30~34歳も46%から75%に上昇。一方、子育て期の雇用形態はパートなど非正規のケースも多い。関西学院大准教授(人的資源管理)の大内章子さんは「夫婦が共にキャリアを築くには、長時間労働など働き方の変革と共に、夫婦が互いのキャリアを尊重し、サポートし合う感覚が大事だ」と話す。
東京都の会社員加藤健さん(35)は昨年9月から7か月間、長男(1)の育休を取った。妻の茜さん(34)がフリーランスで働いており、保育所入所のためにも仕事を再開する必要があったからだ。
健さんは「彼女にはどんどん外に出て、色んなことを吸収してほしい」と言う。勤めるベンチャー企業の従業員は10人程度で、育休取得は社内初。会社との話し合いや業務の引き継ぎには十分な時間を費やした。
学生時代にできなかった語学留学も結婚後に実現した茜さん。「夫にも収入があり、応援してくれるからこそ挑戦できる。共働きは私の人生の選択肢を増やしてくれた」
世帯の共同経営
子育て、仕事、お金――。夫婦間で溝が生まれやすいテーマを話し合うための「世帯経営ノート」(税抜き2000円)=写真=が昨年春の発売から増刷を重ね、3500部を売り上げる。
作成したのは、福岡市の長廣
会社員だった遥さんは深夜の帰宅が多く、育児は妻に任せきり。百合子さんはフリーの人材育成業を再開する見通しも立たず、不信感を募らせた。互いに離婚を予感した産後10か月の頃。仕事でもミスが続き、「全部がうまくいかない。でも、俺が辞めたら収入がなくなる」と号泣した遥さんに、百合子さんがかけた言葉は「家のことと仕事、2人で半分ずつアクセル踏めばいいじゃない」。産後の暮らしのイメージを共有できていなかったことが、すれ違いの原因だった。
夫婦で子育て期の家族を支援する会社を15年に起こした。約100組の夫婦を調査すると、「もっと協力し合えたら」「建設的に話し合いたい」という声が多く上がった。ノートは、こうした夫婦が「世帯の共同経営者」として前向きに対話を進めるツールとして開発。「パートナーの働き方に対して思っていること」「どんな住まい環境で子育てしたいか」など、互いの考えや理想、実現の仕方を話し合い、書き込んでいく。
利用者から「家事や育児を『手伝う』という感覚がなくなった」(30代男性)、「モヤモヤを夫に理解してもらえた」(同女性)との感想が寄せられる。11月から、宮崎県日南市が母子手帳と共に交付する。
2人は言う。「世間の夫婦像にとらわれず、隣にいるパートナーとどんな人生を歩みたいかという理想を大切にしてほしい。『私』だけでなく、『私たち』だから描ける今と未来があるはずです」
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