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障害者差別解消法…スロープ、筆談「配慮」の街

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兵庫・明石市で助成制度

障害者差別解消法…スロープ、筆談「配慮」の街

スロープを設置する洋菓子店

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筆談ボードを用意する飲食店(いずれも明石市内で)

 障害者が暮らしやすいよう行政機関などに配慮を求めた障害者差別解消法が2016年に施行されて、2年半が過ぎた。先進地と言われる兵庫県明石市で、障害のある人とともに、まちを歩いてみた。

 「いらっしゃいませ」。11月中旬、明石市の洋菓子店「くるみや」――。電動車いすを利用する飯塚 理能ただよし さん(38)が店の前に着くと、店員が、声をかけながら出てきて、入り口に折りたたみ式のスロープを設置した。10センチほどの段差がなくなり、飯塚さんは、スムーズに店内に入れた。

 店内でも、店員がケース前に出てきて接客し、希望のケーキを購入することが出来た。飯塚さんは「おかげで一人でまち歩きがしやすくなった」と喜ぶ。

 同店取締役の森本賢一郎さん(38)は「障害のある人との距離が近づいた。街中でも障害のある人をみると、手伝えることがないかと思うようになった」と話す。スロープはベビーカーの利用者が使うこともあり、幅広い人に役立っているという。

 次に訪れたのは、筆談ボードを用意している駅構内の飲食店「都きしめん」。聴覚障害のある北島正夫さん(69)に同行した。

 北島さんが着席すると、店員が筆談ボードを持ってきて、「お決まりになりましたら、手をあげてお呼びください」と書いた。その後も、麺の太さなどをボードでやりとりし、注文した。北島さんは「聞きたいことを諦めなくて済む」と、笑顔を見せた。店長の真嶋裕之さん(30)は「障害者と健常者の区別なく、お客さんに対応できる手段が増えた」と説明する。

 両店が活用したのが、同市が同法の施行にあわせて全国に先駆けて導入した助成制度だ。筆談ボードの購入や点字メニューの作成、スロープや手すりの工事をする事業者や団体に、1件当たり最大20万円を補助するというもの。今年10月末までの約2年半で、335件の申請があった。手軽な筆談ボードの購入が多いが、今年度はスロープの工事も増えたという。

 市の担当者は「整備のハードルが下がり、配慮の意識が浸透してきたのでは。障害のある人の暮らしにくさを取り除くことで、誰にとっても過ごしやすい街になる」と語る。

  <障害者差別解消法>  行政機関や民間事業者に対し、障害を理由にサービス提供を拒むなどの行為を禁止する法律。2016年4月に施行された。これとは別に、障害者がサービスを利用しやすいよう、負担が重すぎない範囲で「合理的配慮」を行うことが、行政機関には義務付けられ、民間事業者には努力義務とされた。

周知不十分 定義に難しさ

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 ただ、明石市のような取り組みは全国にあまり広がっていない。障害者が宿泊施設などの利用を断られることも後を絶たず、障害者が暮らしやすい社会が実現しているとは言いがたい。

 背景には、法律の周知が不十分なことがある。内閣府が2017年に行った世論調査では、同法を「知らない」と答えた人が約8割。「内容も含めて知っている」と答えた人は、5%にとどまった。

 同法が行政機関などに差別的な対応の禁止だけでなく、「合理的配慮」を求めていることが、法律への理解を難しくしている面もある。同法は障害者から要望があった場合、負担が重すぎない範囲で配慮を求めている。

 ただ、何が合理的配慮にあたるのか、一義的に決められない難しさがある。内閣府の担当者は、「具体的な内容は、話し合いで決まる」と説明する。

 仙台市では今年3月、障害者団体が階段を使わずに議会を傍聴できるよう、議場の一部を傍聴席にすることを要望。これに対し、議会側は、「改築工事は難しい」として別の案を考えており、話し合いが続いている。

 障害者支援に詳しい筑波大学の柘植雅義教授は「何をすべきかと難しく考えがちだが、お互いに出来ることを考えてほしい。国もモデルとなる取り組みを支援して事例を増やし、普及させていくことが求められる」と話している。

 (村上藍)

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