乳頭がんで経過観察に
7月に甲状腺に1センチに満たないがんが見つかりました。「乳頭がん」というタイプで、進行も遅く、転移もないので急いで手術する必要はないそうです。現在、経過観察をしていますが、どんな病気でしょうか。また、今後どうすれば良いですか。(68歳女性)
1センチ以下 ほとんど進行せず
丹 生 健一 神戸大学耳鼻咽喉科頭頸部外科教授(神戸市)
乳頭がんは甲状腺がんの一種で、その約90%を占めます。リンパ節への転移がしばしばみられますが、進行はゆっくりで適切な治療を受ければ命に関わることはまれです。
しかし、放置すると、声帯を動かす筋肉を制御する「反回神経」に浸潤して声が出なくなったり、気管に浸潤して息が苦しくなったりすることがあります。また、一部は肺や骨に転移し、悪性度の高いがんに変化することがあります。
このため、甲状腺がんは見つかった段階で、速やかに手術で取り除くのが原則です。
ただ、最近の大規模な観察研究で、大きさが1センチ以下の微小がんの場合はほとんど進行せず、進行しても、その時点で手術すれば大丈夫なことがわかってきました。
微小がんの手術は決して危険なものではありませんが、声帯がマヒしたり、甲状腺機能を補うホルモン剤などを一生飲み続けなければならなくなったりすることがあります。
こうしたことから、最新の診療指針では、微小がんはすぐに手術をせずに定期的な経過観察でもよいということになっています。半年から1年ごとに超音波検査などをして経過を観察します。
ただ、明らかにリンパ節などに転移していたり、がんの場所が反回神経の近くだったりした場合は、早めの手術をお勧めします。
主治医とよく相談して治療方針を決めてください。