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医療ルネサンス柏フォーラム「認知症の最前線」

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[医療ルネサンス柏フォーラム「認知症の最前線」](中)対談

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対談

 高知大学医学部教授 数井裕光さん
 認知症カフェ運営  布川佐登美さん
 認知症当事者    大高優子さん
 コーディネーター  読売新聞東京本社医療部長・館林牧子

[医療ルネサンス柏フォーラム「認知症の最前線」](中)対談

数井裕光さん

  館林  大高さん、認知症と気づいたきっかけは何でしたか。

  大高  職場でもの忘れがぽつぽつ出てきて、同僚に指摘されました。認知症の父の介護経験があったので、「私も同じだったらどうしよう」と、子供の親として不安を感じました。

  館林  その後、どうされましたか。

  大高  迷惑をかけることがあると思い、自分から近所の人に病気のことを伝えました。「もし私が何か分からずに困っていたら、助けてください」と。皆さん声をかけてくれるので、朝の散歩が日常になり、楽しんでいます。地域の防犯パトロールにも毎日朝晩、参加しています。たくさんの友達ができました。

  館林  自ら公表して地域の人に受け入れられるのはすごいことですね。

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布川佐登美さん

  布川  世間ではまだ、認知症は正しく理解されていないと実感します。「特別な人」だとか「何も分からなくなるのでしょう?」などの言葉で片づけられてしまうのは残念です。

  館林  認知症カフェに行くようになった経緯は。

  大高  近所の奥さんが「食事のおいしいところがある」と誘ってくれました。

  館林  カフェではどんな役割をしていますか。

  布川  大高さんには、お茶出しや茶わん洗い、スイーツを冷蔵庫から出してソースをかけるといった作業を任せています。

  数井  自分ができることを発揮できる時間と空間があるのはよいですね。認知症だって何もできなくなるわけではない。認知機能が低下しても、多くのことはできます。ただ、てきぱきとやるのは難しい。時間をかけて待ってあげればできることがあり、自己肯定感を持てます。

  館林  公表できない人もいると思います。

  布川  介護者も、オープンにできない理由がある。そこを読み解くのが支援する上でのポイントです。(公表まで)1年かかった人もいます。それだけ、介護者支援は容易ではない。介護者同士のおしゃべり会に居合わせた人が「実は家族が認知症」と告白したら、その場にいた近所の人が「知っていたわ。でも、あなたが言ってくれないと手助けできないの」と答えました。

  館林  認知症カフェを始めたきっかけを教えてください。

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大高優子さん

  布川  義母と自分の母の介護を同時に抱えた時期があり、理解してくれる人がいなくて閉じこもり、うつ病になってしまいました。同様に一人で介護を抱えて苦しんでいる人がいるのではと思い、語り合える場として開きました。周囲の人たちも認知症の人にどう関わったらいいか分からないだけではないかと考え、地域の人も集まれる場所を作りたかったのです。

  館林  カフェには介護専門職のスタッフも来ていると聞きました。

  布川  診察室での姿だけでは認知症の人の全ては分かりません。多くの専門職の人がカフェにきて、一緒に食事をしながら相談に乗ってくれています。

  館林  認知症の人と地域のつながりを作る意義は何でしょうか。

  数井  人生の最後を地域で住み続けられるようにすることは、その人の生きがいを作ることだと思います。買い物にお金を持ってくるのを忘れたら、「今度でいいから」などと言って誰かに連絡してあげる。住民同士が「お互いさま」と寛容な気持ちになれたら、家族も楽になります。

  館林  地域レベルの活動で障壁と感じるのはどんなことですか。

  布川  若年性認知症の人たちの居場所がないということに尽きます。

  数井  若年性認知症の人の場合、家族の生活も支えなければなりません。元の職場で少しでも長く働き続けられるよう、上司の人と折衝するのも私の仕事です。まだ本人ができること、できないことを、会社の人と一緒に考えます。

  館林  大高さん、最後にひと言お願いします。

  大高  認知症になっても、自分は自分。恥ずかしいと思ったことはない。負けてたまるかと思います。

  数井  認知症は、その人の一部に過ぎません。みなさんが知識を持って助け合うことが最も大事です。もっと許し合える、ゆるやかな社会をみんなで作っていきたいと思います。

  ◇かずい・ひろあき  神戸市出身。鳥取大学医学部卒業後、大阪大学医学部講師などを経て、2018年より現職。54歳。

  ◇ぬのかわ・さとみ  東京都三鷹市出身。母の介護経験から2013年、柏市の自宅を開放し認知症カフェ「みちくさ亭」を始める。59歳。

  ◇おおたか・ゆうこ  名古屋市出身。2017年、アルツハイマー型認知症と診断される。柏市の認知症カフェのスタッフ。59歳。

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