ニュース
もっと知りたい認知症
[医療ルネサンス柏フォーラム「認知症の最前線」](上)支えあれば 私らしく
「認知症の最前線」をテーマにした「医療ルネサンス柏フォーラム」が11月10日、千葉県柏市のザ・クレストホテル柏で開かれた。高知大学医学部の数井 裕光 教授が「その物忘れ、大丈夫!?」と題して基調講演し、柏市内で認知症カフェを運営する布川佐登美さん、若年性認知症を発症し、同カフェで働く大高優子さんと話し合った。その後、柏市で認知症の診療にあたる医師らが活発な論議を繰り広げた。約300人が耳を傾けた。
【主催】読売新聞社
【共催】柏市
【特別後援】ザ・クレストホテル柏、千葉北部読売会
【後援】千葉県、千葉県医師会、柏市医師会、松戸市医師会、野田市医師会、流山市医師会、我孫子医師会
手術で治るタイプも…高知大学医学部教授・数井裕光さん
◇基調講演
認知症とは、20歳くらいまでに獲得した様々な認知機能が、脳の神経細胞の破壊により日常生活を自立して送れないほど低下した状態です。日本では85歳以上で4人に1人の割合になります。
症状は、認知機能障害、 徘徊 や妄想などの行動・心理症状(BPSD)と神経症状に大別できます。原因疾患は主に〈1〉アルツハイマー病〈2〉血管性認知症〈3〉レビー小体型認知症〈4〉前頭側頭葉変性症です。それぞれ症状や対応法が異なります。
このほか、特発性正常圧水頭症という治療可能な認知症があります。
脳脊髄液が頭の中にたまり、脳を圧迫することで起きます。65歳以上の高齢者の100人に1人の割合でいると分かりました。「シャントチューブ」という管を脳に入れて余分な髄液を除去する手術で、46%の患者の認知症が治ったという研究データがあります。
最近は、管を脳に入れない手術法が登場し、水頭症の治療実績が上がっています。治る認知症を見逃さないことが重要です。
アルツハイマー病とレビー小体型認知症は薬で進行を遅らせることができます。
一番頻度が高いアルツハイマー病ではまず、もの忘れが起きます。通常の老化とは異なり、体験そのものを忘れたり、時間や場所が分からなくなったりします。運動機能は長期的に保たれます。レビー小体型認知症に特徴的なのは、幻が見えることと、体の硬化などです。
治療は困難でも進行しないようにできるのが血管性認知症です。脳の血管が詰まったり破れたりした結果、神経細胞が死滅して起こります。喫煙、肥満、過度の飲酒などで血管は傷みやすくなるので、生活習慣を見直して予防することも大事です。
BPSDと呼ばれる精神的な症状は、介護負担を増大させる要因です。
例えば、怒りっぽくなるのは脳の前頭葉と側頭葉の障害が関係すると言われています。もの忘れや理解力の低下による失敗の連続で自信を失い、不安や緊張に苦しめられているのです。
脳の障害には薬による治療をし、その一方で予防のためには「(あなたは)大丈夫」ということを態度や言葉で示すことが大事です。笑顔でゆったり、簡潔な言葉で話しましょう。論理的な説明は有効ではないことが多く、強い口調で話すと叱られたと勘違いします。
最後に、様々なBPSD対応法の成功率を公開するウェブサイト「認知症ちえのわnet」(http://chienowa-net.com/)を紹介します。BPSDの内容、取った対応、症状が軽減したかどうかなどについて、全国から情報を集め、それぞれの対応法の成功率を紹介しています。医療者と家族が知恵を出し合う作業です。ぜひご参加ください。
◇かずい・ひろあき 神戸市出身。鳥取大学医学部卒業後、大阪大学医学部講師などを経て、2018年より現職。54歳。
【関連記事】