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難病医療法施行から4年…「軽症」で助成打ち切り8万人

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重症化や生活の不安訴える声

難病医療法施行から4年…「軽症」で助成打ち切り8万人

使えなくなった医療費助成の受給者証を手に、神奈川県のSLEの女性は生活の不安などを語った(画像を一部修整しています)

 難病患者に対する医療費の公的な助成制度が大きく変わった難病医療法施行から間もなく4年。助成対象となる疾患は大幅に増えた一方、軽症を理由に助成を打ち切られた人が8万人以上いる。同法は、施行後5年以内に見直しを検討すると規定されている。見直しに向けた課題を患者の声から考える。

 「助成からはずれた人の多さに驚いている。軽症と診断されても、継続した治療が必要で、いつ重症化するかわからない。不安は大きい」

 11月、都内で開かれた「日本難病・疾病団体協議会」のフォーラムで、免疫に異常が起きる全身性エリテマトーデス(SLE)の患者である森幸子・同会代表理事はこう訴えた。フォーラムには約200人が参加し、助成打ち切りに伴う生活の苦境や不安を訴える声が相次いだ。

  入院で再申請に苦労

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 京都府木津川市の男性(80)は約20年前、脳血管に障害が起こる、もやもや病と診断された。新たな血流を確保するバイパス手術を受けた後は状態が落ち着いていたため、制度変更に伴って助成対象から外れた。

 だが、今年4月、悪化して脳 梗塞こうそく となり、約2か月入院した。6月、改めて助成を申請し、最終的に認められたが、申請までにかかった入院費は助成を受けられなかった。

 男性の妻(77)は「入院中に申請の手続きをする余裕はない。一番お金がかかる時に助成がなく、大変だった」と話す。

 SLEの神奈川県の女性(68)は、軽症との診断で助成を打ち切られた。炎症を抑えるステロイド剤を服用してきた影響か、右脚の 大腿だいたい 骨の一部が 壊死えし し、8年前から人工股関節を使う。疲れやすいため、出歩くのを避けがちだという。

 「同じ病気で、症状は軽く見えるのに、助成を受ける人もいる。『なぜ?』と感じるが、診断書を書いてもらった主治医との関係が続くことを考えると、気まずくなるようなことは言えない」と複雑な思いだ。

  自治体補助に影響も

 助成対象の患者と認められなくなると、通院時のタクシー代に対する自治体独自の補助といった行政サービスを受けられなくなることもあり、患者の生活に与える影響は大きい。

 患者の生活実態などを調べる厚生労働省研究班の小森哲夫代表(国立病院機構箱根病院長)は「症状の軽重にかかわらず、難病の人は長期の療養が求められることが多い。重症度の判断が、そうした事情を適切にくみ上げているかの検証が必要だ」と指摘する。

 厚労省は同法に基づいて難病患者のデータベースを作り、新しい治療法の研究開発に役立てたいとする。しかし、助成の申請を見送った軽症者のデータは残らない。西沢正豊・新潟大名誉教授(神経内科)は「重症者との違いを比較するには、未申請の人を含む軽症者のデータも重要だ」と話す。

対象疾患は6倍 予算は倍増

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 2015年1月の難病医療法の施行以前、難病の医療費の助成対象は56疾患にとどまり、助成を受けられない疾患の患者からは「不公平」との声があがっていた。

 このため、厚生労働省は施行を契機に助成対象を段階的に増やし、現在は約6倍の331疾患まで拡大した。

 重い発疹や貧血などが表れるキャッスルマン病も、新たに助成対象になった疾患の一つだ。

 治療薬が高額で、患者会代表の福島かおりさん(51)は「治療を続ける上で、経済的に生活が少し楽になった。希少な病気を医療関係者に知ってもらうきっかけにもなった」と話す。

 厚労省は対象疾患を増やした代わりに、軽症と診断された患者に対する助成を打ち切る方針に転じた。ただ、昨年末までの3年間は、症状の軽重を問わず、助成を続ける「経過措置」を取った。

 厚労省によると、経過措置終了に伴い、従来助成を受けていた患者約71万7000人のうち、8万6000人は審査で軽症を理由に助成継続が認められなかった。

 この他、認定を受けるのは困難などと主治医から判断され、申請をあきらめた人などが6万1000人いた。

 今年、助成を受けるのは331疾患で89万2000人。国の予算規模は1140億円で、施行前の549億円(13年度)から倍増した。

 (安藤奈々、加納昭彦)

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