文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

介護のいろは

連載

[介護のいろは](12)「在宅」支える柔軟サービス「小規模多機能」って何?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 介護が必要になっても自宅で暮らし続けるための介護保険サービスの一つに「小規模多機能型居宅介護」(小規模多機能)があります。事業所に通ったり泊まったり、職員に自宅に来てもらったり。利用者の状況に応じた支援を、一つの事業所で柔軟に組み合わせて提供してくれます。(辻阪光平)

「通い」も「宿泊」も

 

[介護のいろは](12)「在宅」支える柔軟サービス

開放的なフロアで、おやつづくりを楽しむ利用者ら(大阪市住吉区の「小規模多機能ホームサテライト夢家」で)

 診療所跡を活用した大阪市住吉区の「小規模多機能ホーム サテライト 夢家ゆめや 」。柔らかな陽光がそそぐ明るいフロアで、利用者と介護職員らがおやつの蒸しパンづくりをゆったりと進めていた。

 認知症を患い、2年前に利用を始めた要介護1の女性(84)はここに週3日通う。「みんなで料理や洗濯をして、おしゃべりするのが楽しい。実家のようにくつろげる」とほほ笑む。女性は午前10時から午後3時半まで過ごし、昼食と入浴を済ませて帰る。ほかに、職員が週1回女性宅を訪ね、一緒に掃除するなど1時間の見守りを行っている。

 介護サービスを利用するには、サービスごとに事業所と契約するのが一般的だが、小規模多機能は一つの事業所で「通い」を中心に「宿泊」「訪問」を組み合わせたサービスを提供する。登録定員は29人以下で、「自宅でも事業所でも顔なじみの職員がこまめに関わるので、体調の異変に気づきやすい。環境の変化に敏感な認知症の人にも安心して利用してもらえる」と夢家の今西良介さん(35)は話す。

 サービスの中身について、通常の訪問介護やデイサービスのように細かな規定はない。外出の付き添いや服薬管理のために朝昼晩に短時間ずつ訪問するなど、多様な支援ができるのも強みだ。事業所にケアマネジャーがいるため、家族の体調が悪い時には通いを宿泊にしたり、通いを渋る日は職員が弁当を持って訪問したりと、柔軟な対応が期待できる。

月々の定額制

 

id=20181203-027-OYTEI50006,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

 利用料は通いや訪問の回数に関係なく、要介護度に応じた月々の定額制。自己負担分(1割)は約3400~2万7000円が目安で、そこに事業所によって異なる昼食費(平均546円)や宿泊費(同2186円)などの実費がかかる。

 1月現在、全国で5348か所が運営。最近では 看取みと りに対応する事業所も増えている。夢家を3年近く利用した80歳の母親を10月、自宅で看取った女性は「元気だった頃はカラオケ喫茶に行きたいという希望をかなえてくれた。最後の1週間は職員の方に毎晩家に来てもらい、母を見送ることができた」と振り返る。

 ただし、急な訪問や宿泊、看取りにどこまで対応できるかは事業所ごとに差があるので、事前の確認が大切だ。

 「訪問介護やデイサービス、ショートステイなど一部の介護保険サービスとは併用できないことにも注意して」と今西さん。こうしたサービスをすでに受けている場合は、現在担当のケアマネや介護事業者と解約する必要がある。世話になったケアマネに直接解約を伝えにくい場合は、最寄りの地域包括支援センターに相談するといい。

[専門家に聞く]職員と積極的に対話を

 

  小規模多機能の事業所を選ぶポイントや利用する上での注意点を、「全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会」(東京)事務局長の山越孝浩さんに聞いた。

 

id=20181203-027-OYTEI50007,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

 柔軟な支援がある小規模多機能とは、長い付き合いになることが多い。なるべく複数の事業所を見学、体験利用して、契約先を選ぶことをお勧めします。

 利用者本人と家族で訪れ、雰囲気や居心地を確かめましょう。新築はきれいですが、落ち着かないという人がいます。畳の生活が長いと、洋室ばかりのところではくつろぎにくいかもしれません。本人がうまく話せなくても、表情を見て感じ取れるところもあります。

 事業所の理念やサービス提供の方針のほか、事業所によって差が大きい宿泊費など、実費部分の確認も忘れずに。

 小規模多機能は定額制なので、サービスの「量」を求めたくなりますが、事業所としては必要以上のことはできません。悩みや願いを伝え、一緒になって考えていくことが重要。職員と話し合う機会を積極的に持つことが、より良い支援につながることを知っておいてください。

<疑問や思い 募集します>
 「介護のいろは」は毎月1回の掲載です。介護に関する疑問や今後読みたいテーマ、介護に抱く思いも募集しています。〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「介護のいろは」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

連載の一覧を見る

介護のいろは

最新記事