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高齢者・子ども連れ・障害者…災害時に並べない人も…避難、物資配布にルール必要

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高齢者・子ども連れ・障害者…災害時に並べない人も…避難、物資配布にルール必要

関西空港から脱出するため、バスを待つ利用客たちの行列(9月5日、関西空港で)

 災害が相次ぐ中、避難時や物資の配布時などに、高齢者や障害者らが行列に長時間並ぶことができず、結果的に後回しになるケースが出ている。自治体や大規模施設の多くは避難計画に「弱者への配慮」を盛り込むが、具体的な手順を定めるところは少なく、専門家は「混乱時でも配慮が行き渡るようなルール作りが必要」と指摘する。

 

「助けてくれない」

 

 「大変なのはみんな同じ。『先に入れて』なんて、とても言えませんでした」

 9月の台風21号による関西空港の閉鎖で、3日間足止めされた大阪市天王寺区の前原美絵さん(70)はそう振り返る。

 前原さんは当時、友人と海外旅行に行くため関空にいた。心疾患の持病があり、昨年8月に心臓にペースメーカーを入れたばかり。閉鎖翌日からバスと船による輸送が始まったが、長蛇の列に、とても並ぶ気は起きなかった。結局、空港施設のベンチでもう1泊し、帰宅後は2日間寝込んだという。

 京都市伏見区の女性(25)も長男(3)と2人で行列に並べず、関空島のホテルに宿泊。「誰も助けてくれず、異国に取り残されたようだった」と疲れた声で話した。

 関空を管理する関西エアポートの避難計画には「高齢者や障害者に配慮する」と書かれていた。しかし、行列について具体的な記述はなく、当日は先着順となった。同社の担当者は「早く全員を脱出させることを優先した。配慮が不十分だったのであれば、申し訳ない」と釈明する。

 

現場任せ

 

 災害対策基本法は「被災者の年齢、障害の有無などの事情を踏まえ、適切に援護する」と規定。これに基づき、自治体や企業は、避難計画に弱者への配慮を盛り込んでいるが、具体的な手順を定めたケースが少なく、徹底もされていないのが現状だ。

 「被災地障害者センターくまもと」によると、2016年4月の熊本地震では、避難所での救援物資の配布やトイレの使用で、障害者が行列に並ばされるケースが複数あったという。担当者は「職員やボランティアによって対応が変わる」と話す。

 9月の北海道地震でも、同様のケースがあった。北海道ろうあ連盟の金原浩之事務局長は「聴覚障害者は行列ができても何の行列かわからず、途中であきらめることも多い」と指摘した。

 

「優先案内」「整理券」

 

 災害時の行列はどのようにあるべきか。

 日本大理工学部の轟 朝幸ともゆき 教授(交通システム工学)は「飛行機の搭乗のように、弱者優先をスピーカーなどで周知すれば一般被災者からも不満が出ないのではないか」と提案。「整理券の配布も有効で、あらかじめ用意しておけば、緊急時も対応できる」と指摘する。

 東京大総合防災情報研究センターの田中淳教授(災害情報論)は「行列は平等ではなく、被災者同士の思いやりにゆだねていては、問題は解消されない。行政や大型施設の管理者は、過去の災害を教訓に、具体的なマニュアル策定を検討するべきだ」と注文した。

          ◇

【関西空港の閉鎖】  9月4日午後、台風21号による強風でタンカーが関空と対岸を結ぶ連絡橋(全長3・8キロ)に衝突。旅行客ら約8000人が、大部分が停電した関空のターミナルビルなどに取り残された。管理する関西エアポートは、翌5日早朝から深夜にかけ、高速船とバスで利用客の大半を関空島外に脱出させたが、一部は島内にとどまった。

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