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高齢者の多剤服用の対策が急務に

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高齢者の多剤服用の対策が急務に

 高齢者でのポリファーマシーが問題となっており、不必要な薬を減らすための取り組みが始まっている。東京大学医学部附属病院(東京都文京区)老年病科科長の秋下雅弘氏は、MSDが11月6日に東京都で開催したメディアセミナーで講演し、6種類以上の薬剤を服用していると、副作用などの有害事象の発現頻度が高まると説明。高齢者で特に注意が必要な薬剤を例示したうえで、高齢者と薬の付き合い方について解説した。

高齢者の4割が5種類以上を服用

 ポリファーマシーとは単に服用する薬剤数が多い(多剤服用)ことではなく、それに関連して有害事象が増加するなどの潜在的な害をもたらす状態をいう。

 厚生労働省が1人の患者が1カ月に1つの薬局で受け取る薬剤数(院外処方)を調べたところ、75歳以上の41.7%が5種類以上の薬剤を処方されていた。このうち25.4%は7種類以上を受け取っていた。

 高齢者の服用薬の種類が増えると、有害事象のリスクが上昇することが分かってきた。東京大学病院老年病科の入院患者2,412人に対する調査で、高齢者で服用する薬が6種類以上に増えると、有害事象の頻度が明らかに増えることが判明したのである。

 また、都内の診療所に通院している高齢患者165人を2年間追跡し、転倒の発生頻度を調べたところ、服用する薬剤が4種類以下だと転倒リスクが20%以下だったのに対し、5種類以上では40%前後に倍増した。

 こうした高齢者の多剤併用の実態を受けて、日本老年医学会が「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を策定したほか、厚労省が今年5月に「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」をまとめるなど、対策が講じられている状況だ。

高齢者の薬との付き合い方とは

 多剤併用により出現する有害事象は多種多様だ。特に高齢者の場合、ふらつきや転倒、食欲低下といった頻度の高い有害事象が現れることが多い。だが、「歳のせい」だと言われ、見過ごされがちだ。先述の指針ではこうした「薬剤起因性老年症候群」に注意を払い、薬剤との関連が疑われる場合には中止や減量を考慮するよう求めている。

 秋下氏は、高齢者における重大な問題として、認知機能低下やふらつき・転倒を挙げたうえで、注意を要する薬剤を示した。

 認知機能低下の副作用を起こす可能性のある薬剤には、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬、三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬などがある。中でも、花粉症や過活動膀胱、不整脈やパーキンソン病などさまざまな病気に用いられている抗コリン薬や抗コリン作用を有する薬剤は、その累積使用量が多いほど認知症の発症リスクが高まるとして注意を促した。

 ふらつきや転倒を引き起こす薬剤として、降圧薬(特に中枢性降圧薬、α遮断薬、β遮断薬)、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬、抗うつ薬(三環系)、抗てんかん薬、パーキンソン病薬(抗コリン薬)、抗ヒスタミン薬などがある。

 秋下氏は、ポリファーマシーの解消に向けて、一般向けに「高齢者が気を付けたい 多すぎる薬と副作用」と題する啓発用のパンフレットを作成するなど、取り組みを進めていることも紹介。高齢者の薬の付き合い方として、(1)自己判断で薬の使用をやめない(2)使っている薬は必ず伝える(3)むやみに薬を欲しがらない(4)若い頃と同じだと思わない(5)薬は優先順位を考えて最小限に――といった点を踏まえて服薬してほしいと訴えた。(あなたの健康百科編集部)

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