いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち 松永正訓
医療・健康・介護のコラム
羊水検査「ダウン症ではありません」に安堵したが、2歳4か月で…多くの障害は出生前診断で分からない
「五体満足」で生まれた赤ちゃん しかし…
そして、検査結果を聞く日がやってきました。緊張の極限で聞いた医師の言葉は、「染色体検査の結果は正常です。ダウン症ではありません」というものでした。全身の力が抜けるくらい 安堵 しました。
赤ちゃんは、難産の原因となる 児頭 骨盤不均衡という状態でしたので、帝王切開での出産になりました。しっかりとした産声を上げて生まれた赤ちゃんは、「五体満足」でした。彼女は赤ちゃんに勇太(仮名)と名付けました。
自分が母親から英才教育を受けたように、彼女も勇太君に英才教育を施しました。生後3か月から、絵本を毎日10冊読み聞かせ、漢字カードや算数の教材用カードを見せて育てました。クラシック音楽も毎日聴かせました。
ところが勇太君は、1歳を過ぎても、2歳になっても、言葉を発しませんでした。2歳3か月で保育園に入ると、ほかの園児にまったく関心を持とうとしませんでした。集団行動をとらず、一人で絵本を見たり、寝転んだりしています。ただ、国旗や時刻表に強い関心を示すという不思議な行動がありました。
自閉症の診断 すぐには受容できず病院巡り
2歳4か月で、勇太君を子どものこころ診療部へ連れて行きます。医師はその道の専門家でした。勇太君のしぐさを見て、医師は1分もしないうちに「あなたのお子さんは自閉症です」と断言しました。
彼女は驚き、腹を立てました。自閉症という障害も受容できなかったし、そんなふうに言われてしまうわが子をかわいいと思えなくなっていきました。「診断は絶対に間違っている」と考え、勇太君の手を引いて五つのクリニック・病院を回ることになります。しかし、1年がたった頃、彼女は、自分の子が知的障害を伴う自閉症だと受け入れざるを得なくなります。
おびえていたのは「見えない不安」
自閉症を含む発達障害は、現代社会において患者数が増えているという意見が医師の間にあります。発達障害は、一つの遺伝子や一つの染色体の異常によって発症するのではありません。したがって、今後も出生前に診断されることはないでしょう。いえ、出生前診断で分からない障害などいくらでもあります。健常児として生まれても、その後、重い病気や障害を負うこともあります。
勇太君は現在18歳、特別支援学校高等部の3年生です。今の彼女は、完全にわが子を受け入れて、毎日を楽しく過ごしています。振り返ってみると、自分は「見えない不安におびえていただけだった」と気付きます。もし、過去の自分に助言できるなら、「出生前診断を受ける必要はないよ」と伝えたいそうです。
勇太君と母親の人生の軌跡は『 発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年 』(中央公論新社)に詳述しています。(松永正訓 小児外科医)
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