文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

あなたの健康百科 by メディカルトリビューン

あなたの健康百科 by メディカルトリビューン

サイコパスはためらいなく嘘をつく

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
サイコパスはためらいなく嘘をつく

 『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター、『悪の教典』の蓮実聖司など映画や小説で描かれるサイコパスは魅力的で残酷だ。そして平然と嘘をつく。京都大学こころの未来研究センター特定准教授・阿部修士氏と、米国ハーバード大学および米国ニューメキシコ大学の研究グループは、サイコパス傾向が高い人ほどためらいなく嘘をつき、彼らの脳では心の葛藤に関わる部位の活動が低いことを世界で初めて明らかにした。(『Social Cognitive and Affective Neuroscience』)。

心の葛藤に関わる脳の活動が低い

 サイコパスは精神医学的には反社会性パーソナリティ障害に分類され、良心や責任感の欠如、不誠実、冷酷などの特徴が見られる。人口の1%程度とさほど珍しくはないが、研究を実施するほどの人数を集めるのは簡単ではなかった。一方、囚人の15~25%がサイコパスに該当するという報告があることから、同グループでは米国ニューメキシコ州の刑務所に収監中の男性67人を対象として研究を行なった。

 用いられた手法はコイントス課題で、コンピュータが表示するコインの裏表を対象者が”心の中で”予測し、自分の予測が当たっていた場合に「正解した」と自己申告するものである。正解ならば報酬がもらえ、不正解ならば報酬が減らされる。損得が絡み容易に嘘がつける条件下で、偶然の確率を超える正解率を示せば「嘘をついた」とみなした。この課題を実施中に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で脳活動の測定も行った。

 その結果、対象者全体ではサイコパス傾向と嘘をつく頻度に関連は見られなかった。しかし、嘘をつく割合が高い囚人群に絞れば、「サイコパス傾向が高いほど嘘をつく際の反応時間が速い。すなわち、ためらわずに嘘をつく」ことが認められた。また、fMRIにより前部帯状回と呼ばれる脳の部位の活動が低いことが明らかになった。前部帯状回は行動決定前に生じる心の動き、葛藤に関わる機能を持つと考えられている。

 研究グループでは、この結果について「ためらいなく嘘をつくとされるサイコパスの特徴を心理学および神経科学の点から明らかにすることができた。ただし、今回見られた前部帯状回の活動低下は、必ずしも機能低下や損傷の存在を意味するものではない」としている。

 共同研究者であるニューメキシコ大学教授のKent A. Kiehl氏は、サイコパスの脳研究の第一人者として知られ、これまでに扁桃体など前部帯状回同様に感情処理に重要な役割を果たす部位の活動がサイコパスでは低いことを明らかにした。同氏はそれらの結果を踏まえ、一般的な人間が感情に動かされて行う判断を、サイコパスは冷静に考えて処理していると結論している。

 このように最新の脳科学は、サイコパスの心のメカニズムを解明しつつある。その結果はサイコパスだけではなく、「共感性が乏しい」「行動に対する責任を取らない」「罪悪感を感じない」「自己中心的」「口だけは達者」など、私たちの身近な者の、そして私たち自身の闇を暴いてくれるのかもしれない。(あなたの健康百科編集部)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

kenkohyakka

あなたの健康百科
あなたの健康百科はこちら

あなたの健康百科 by メディカルトリビューンの一覧を見る

最新記事