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がんを語る

コラム

胃がん(下) 保険外の治療は高額 障害認定のハードルも高く…でも、希望を持って毎日を

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高額な治療に年金や給料つぎ込む

――東さんが受けた重粒子線治療は高額ですね。

 重粒子線治療は保険適用外なので約300万円かかります。それを前納しないといけません。通常、胃がんには重粒子線治療はできません。重粒子線はピンポイントで照射するので、胃のように動く臓器はだめです。私の場合、胃は全摘しており、転移した腹部のリンパ節に照射しました。その部分は一発で効きました。

 鎖骨のリンパ節が腫れた後は、今度は分子標的薬のハーセプチンですが、胃がんには未承認だったので全額自己負担になり、最初は週1回の点滴で約7万円かかりました。5年間ぐらいは未承認薬のまま投与を受け、毎年400万円ぐらいかかりました。私の年金と仕事のお金は全部つぎ込み、生活は家内の年金とバイトで何とかまかないました。がん保険にも入っていたので、かなり助かりました。

 ハーセプチンが胃がんにも承認されたのが2011年3月10日で、東日本大震災の前日でした。日程が1日ずれていたら承認が遅れていたかもしれません。

――ハーセプチンのおかげで助かった?

 ハーセプチンがなかったら、もう私はいなかったでしょう。先日、オプジーボの開発に結びついた研究成果がノーベル賞に選ばれましたが、効く患者は2~3割といわれています。ハーセプチンの場合も、乳がんでも効く患者は2割ぐらいです。打ってみないとわからないのですが、そういう薬が増えてれば全体として効く可能性が高まりますから、新しい薬が出てくるのは非常にいいことだと思っています。

30歳代で胃全摘でも障害者と認定されない現実

――有川さんは費用の心配は?

有川 私は一般的な外科手術だけで、抗がん剤もやっていないので最小限で済んでいます。ただ、やせて体形が変わってしまったので、洋服を全部捨てたりして、新しいスーツにお金がかかりました。食べられるものも限られるので、食費もよけいにかかります。住宅ローンを組むときにがん保険にも入っていたので、一時金が入り、それで最初はやりくりしていました。でも休職したり、子供2人に住宅ローンも抱え、生活が厳しい時期もありました。

 それで課題に感じたことは、胃を全摘しても障害者と認定されないことです(注)。障害者手帳の有無で労働条件がかなり変わります。今は根性でフルタイムで働いていますが、本当なら手帳をとってもう1日ぐらい減らしたり、障害年金がもらえたりすれば負担が大分減ります。

 今はがんで障害年金を請求するとき、状態が相当悪くないと認められません。実務レベルでいうと、認定が下りて決まったときには、もう亡くなってしまうぐらいの数値の悪さじゃないと認められません。自分の場合、若年で胃の機能が完全に失われたので、今後のことを考えると、障害年金を一部でももらえたら生き方が変わると感じています。

――体重は何キロから何キロに減ったのですか。

有川 70キロぐらいあったのが、術後に一番やせたときは53キロぐらい。今57~58キロぐらいです。血液の状態は、今年春ぐらいから全部正常値に戻りました。ずっと貧血で、鉄も欠乏、ビタミンB12も低かったのですが、5年かけて全部正常値に入りました。

 今は残業もしています。ただ、やはり疲れるので、業務中にちょっと事務室に引っ込んで休んだり、お菓子とかアメをなめて一息入れたりします。最初の3年目までは本当につらくて、通勤途中で家に帰ってくる日もありました。

――森本さんは胃がんが見つかった当時は?

森本 専業主婦で、その当時はまだ子供を産んだばかりだったので、手術後3年目ぐらいになってから書道講師の仕事を始めました。今も教えています。

――東さんは仕事への影響はどうでしたか。

 がんになって1年ぐらいで仕事をやめました。ところが、やめたのはいいけれど、治療費がかかるので働かないと大変だということで、請負契約の仕事を始めました。病院に週2回ぐらい行って、残りは働く。そのようにして9年間勤めました。それでかなり費用面では助かりました。

(注)がんで身体障害者手帳を取得できるケースは、人工肛門や人工膀胱(ぼうこう)になった場合や、喉頭を全摘して発声できなくなった場合、肺機能の低下で在宅酸素療法を受けている場合などがある。胃の全摘は対象になっていない。

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男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
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