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がんを語る

医療・健康・介護のコラム

胃がん(上) 痛み、寝汗、酒に弱く…異変はあった 切除手術後は後遺症と闘いながら

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33歳で胃全摘のショック 5年半経過し、少し気持ちが落ち着いた

 

有川(写真右) 39歳の有川です。精神科クリニックのソーシャルワーカーです。33歳のとき、年度末ぐらいに「腹が痛いな」「胃が痛いな」という感じがあり、家族と「胃カメラ検査を受けてみようかな」と話していました。そうこうするうちに自宅で下血し、何か怪しいと思って、自分で車を運転して病院に行きました。

 医師は「胃潰瘍だよ。でもちょっと怪しいから検査しようね」と軽い感じで話し、5日間入院しました。会計を済まして帰ろうとしたとき、「ちょっと来てください」と医師に言われて、「胃がんです」と告知されました。ショックで立てなくなりました。

 結婚していることも言っていなかったので、「家族いるの? あなた」みたいな話になり、連絡を受けた妻も「何でそんな大事な話を急に告知するのか」と怒っていました。でも私としては、早く見つけてくれてよかったと思うようにしていました。

 がんは5センチぐらいあり、胃は残せないということでした。手術担当の医師から「一発で大きく取るけど、それで完治を狙ったほうがいい」と説明を受け、手術で胃は全摘し、脾臓と、腸を少し取りました。

 住宅ローンも組み、子供も2人いるので、もし手術後に抗がん剤治療が続いたら、経済的にやっていけるか不安もありました。幸いに転移はなく、抗がん剤は使わずに済みました。ふだん私は精神科のソーシャルワーカーで、患者のリハビリやお金の相談などを受けているのですが、今度は自分ががん患者としてどう生きていくかという問題に直面してしまいました。

 体重も17キロぐらい落ちて患者さんに隠せないし、がん自体は取れたのですが、後遺障害による貧血とか、食べ物が腸に一気に流れ込み、冷や汗や動悸どうきが出たりするダンピング症候群がすごくて、「仕事できるのかな」とか、「自分が患者さんの相談に乗れるのか」ということも考えました。ただ、そうはいっても現在、手術後5年半を迎えたということで、少し気持ちは落ち着いてきたとこころです。

出産後に急にやせて発覚 胃の3分の2切除、今も再発不安

森本(写真左) 私も同じような状況だったので、当時を思い出しました。次男を産んだ直後から急にやせ始めました。普通、産後はなかなかやせないのですが、見る見るうちにやせたので検査を受けたところ、胃がんが見つかりました。その次男も今24歳なので、私も24年生き永らえたということになります。

 胃は3分の2を切り取りました。胃が残っていると再発の心配もあるので、今思うと、後遺症はあっても、自分としては全部を取ってくれた方が良かったかなとも思います。手術後、当初は3か月に1回、今は8か月に1回、胃カメラ検査を受けていて、先日ちょっと引っかかりました。悪いものではないですが、もしかしたら悪くなる可能性もあるからということで、今お薬を飲んでいます。

 それから胃がんとは全く別ですが、1年前、腎臓の近くに肉腫が見つかりました。脂肪肉腫といって10万人に1人か2人ということです。悪性ということで、去年取りました。それを調べたら、今のところ暴れてはいないので化学療法はしなくていいということなのですが、再発率は60%と言われていて、この肉腫も怖いなというところです。

「寝汗ひどく」「酒に弱くなった」「胃に痛み」……症状?

――東さんは自覚症状はありましたか。

 特になかったのですが、56歳ごろ、単身赴任で北海道の千歳市にいたとき、趣味でランニングを始めました。それから寝汗がひどくなりました。当時はランニングのせいかなと思っていましたが、後で考えると、がんのせいだったのではないかと自分では思っています。手術後は寝汗が出なくなりましたから。

――がん検診は?

 もちろん毎年受けていました。胃潰瘍は指摘されていましたが、今から考えたら十分な治療をしていなかったのが良くなかったかな、という反省はあります。

――有川さんは胃の調子が悪いという感覚はあったのですね。

有川 最初はわからなくて、ちょっと変だと思ったのが、「あれ、この程度のお酒でこんなに酔うかな」といったことがありました。ビールの1杯や2杯ですごく気持ち悪くなるので、「疲れているのかな。30歳過ぎて、むちゃして飲んでいるせいかな」というのが最初の異常です。昼は忙しくてあまり食べなかったり、夜は酒だけのこともあったりしたので、不摂生のせいだと思っていました。夜中に胃が痛くて起きたこともあり、年齢的にも胃潰瘍だろうと考えていました。

 職場の健康診断は11月に受けましたが、採血検査の結果も異常なく、腫瘍マーカーの数字も正常値でした。だから、やばいという感覚はなかったです。

――森本さんはどうでしたか。

森本 実は妊娠前に胃の痛みがありました。ストレスかなと思っていたのですが、妊娠がわかった途端にぴたっとやみました。それでひと安心していたのですが、出産した途端に急に痛くなり、背中のほうに放散痛(病気の原因と違う部位に出る痛み)もありました。私はもともと看護師で、胃がんはあまり初期症状が出ないのを知っていました。ですので、すごくやせていくし、胃も背中も痛いし、これは末期じゃないのかと思ったほどでした。

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男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
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