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がんを語る

医療・健康・介護のコラム

胃がん(上) 痛み、寝汗、酒に弱く…異変はあった 切除手術後は後遺症と闘いながら

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 当事者の声を通して、がんとの付き合い方を考える患者座談会「がんを語る」。2回目のテーマは胃がん。減少傾向も見られますが、大腸がんに次いで多いがんです。早期なら内視鏡治療だけで済むこともあります。今回は、ある程度進行して胃の切除手術や抗がん剤治療を受けた3人の方に参加していただきました。治療を乗り越えた後も、胃を切ったことによる後遺症にうまく対処していく必要があります。

胃がん 胃の粘膜の細胞が、がん細胞になって増えるがん。大きくなるにつれ、胃の壁の中に入り、リンパ液や血液の流れに乗って転移する。がんが浅いところにあり、転移していなければ内視鏡治療で治る。手術は、がんの部位や進行度によって切除方法が変わる。体に負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術も増えている。胃を切った後の後遺症として、食べ物が腸に一気に流れ込むことで不快な症状が起きるダンピング症候群が知られている。ピロリ菌感染が胃がんの主な原因とされ、除菌が広く行われている。

参加者(敬称略)

東 壮志(あづま たけし)元公務員75歳
有川 雅俊(ありかわ まさとし)ソーシャルワーカー39歳
森本 啓子(もりもと けいこ)書道講師59歳
進行役ヨミドクター副編集リーダー・藤田勝

「余命2年」から13年 当時未承認の分子標的薬で今も元気に

――これまでの経過を簡単に教えてください。

(写真左) 10月末で75歳になり、後期高齢者入りした東です。今年4月まで働いていましたが、今は年金生活です。

 会社の健康診断で引っかかり、2005年4月に胃がんと診断されました。がんの専門病院で、手術を前提にがんを小さくする抗がん剤治療を受けたのですが、途中で「鎖骨のリンパ節が腫れている。がんがもう全身に回っているから、今後は手術じゃなくて抗がん剤治療を進めていきましょう」と医師に言われました。手術ができないなら、もう2~3年かなと覚悟しました。うちの家内は実際、私の余命は2年と医師に告げられていたそうです。

 でも家内はあきらめ切れず、福岡や倉敷、横浜など全国の医師に相談しました。その結果、「今ならまだ切っても治る見込みがあるのではないか」という確信が持てたので、手術可能と判定してくれた横浜の病院で06年8月に手術を受けました。胃を全摘し、周辺の脾臓ひぞうと胆のうも取りました。

 でも腫瘍マーカーが下がらず、翌年2月に腹部のリンパ節への転移がわかりました。もう手術はできないということで、放射線治療の一種である重粒子線治療を勧められ、千葉で受けました。それで腹部の転移は消えたのですが、今度は鎖骨のリンパ節が大きく腫れ上がりました。すでに、受けられる抗がん剤治療はすべて受けていたので、いよいよ、もうこれで終わりかなという状況でした。

 ただ、その2か月前、家内がある腫瘍内科医にセカンドオピニオンを求めたところ、当時乳がんで使われていた、新しいタイプの抗がん剤で分子標的薬のハーセプチンが胃がんにも効く可能性があるという話を聞いていました。早速、横浜の主治医に相談して検査してもらいました。すると自分の場合、非常に効果が期待できるというデータが出ました。それで週1回、ハーセプチンの点滴治療を受けたところ、たちまち効果が出て、腫瘍がほとんど消えたのです。2か月後のPET検査(大量のブドウ糖を消費するがん細胞の性質を利用し、がんを発見する検査)で画像上はがんが見えなくなり、1年後には腫瘍マーカーも標準値になり、現在に至っています。ハーセプチンは10年間も続けましたが、体に負担がかかるので1年間休薬し、最近また始めています。まだ治療中ではありますが、元気に過ごしています。

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男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
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