いきいき快適生活
介護・シニア
管理栄養士 食の訪問指導
食習慣聞き取り、改善プラン
高齢になると、生活習慣病や食欲低下などから、食生活の改善が必要なことも多い。介護保険や医療保険には、管理栄養士が訪問し、栄養管理についてのアドバイスを受けられるサービスがあるので、利用してみるのも手だ。
福岡クリニック(東京)に勤務する管理栄養士の中村育子さんは、訪問栄養指導の担い手として日本栄養士会などが認定する「在宅訪問管理栄養士」の一人。毎月100軒程度を訪問し、栄養指導を行っている。訪問先は80歳前後の高齢者がほとんどだ。「定期的に栄養士が訪れることが気持ちの張りとなり、食生活改善が進むこともあります」
■介護保険の一つ
訪問による栄養指導は、要介護認定を受けた通院が難しい人に、医師や薬剤師らが療養上の管理・指導を行う介護保険の「居宅療養管理指導」の一つ。管理栄養士は医師の指示書に基づき、糖尿病や腎臓病などで食事の管理が必要な人や、栄養状態の悪い人の自宅を訪れ、月2回を上限に1回30分以上の指導を行う。利用料は地域ごとに異なり、負担割合が1割の場合、東京都内での自己負担額は1回540円前後。要介護者以外でも、医師が必要と認めた場合には、医療保険で同様のサービスを受けられる。
本人だけでなく、食事の用意をする家族やケアマネジャー、ヘルパーらが指導を受けることもある。「指導内容を家族やヘルパーらと共有することで、栄養士が訪問しない間も継続して実践するように促してもらえます」と中村さん。実際に台所に立ち、具体的な調理法の指導も行う。
指導では、これまでの食習慣を聞き取り、「塩分が多い」「間食が多い」など問題点を洗い出し、改善プランを立てる。減塩タイプの調味料を薦めたり、スーパーやコンビニエンスストアで手軽に買える調理済み食品の活用を助言したり。「なるべく負担にならず、かつ食事の満足度を下げずに進めるのが大切です」
■1日10種の食事を
生活習慣病などを防ぐために、高齢者が食生活で気を付ける点は何か。
近年はたんぱく質の不足による高齢者の「低栄養」問題が指摘されているが、高齢者の食事改善に詳しい東京都健康長寿医療センター研究所の成田美紀さんは、「体を動かさなくなったり、配偶者に先立たれたり、様々な要因で食事の量が減ると、たんぱく質に限らず、ビタミンやミネラルなどの栄養が全体的に不足しがちになります」と指摘する。準備や片付けがおっくうになり、食事をとらなくなったり、メニューが単調になったりする傾向もあるという。
こうした問題点を踏まえ、成田さんは1日3回の食事のうち、2回はご飯などの主食と主菜、副菜の3品がそろった食事をとるように指導する。「1日の食事に肉、魚、卵などのたんぱく質を含む食品5種類と、野菜、イモ類、果物などビタミンやミネラルがとれる食品5種類の計10種類がそろっていることがバランス良い食事の目安」と成田さん。同研究所などが開発したスマートフォン用アプリは、食事の記録をつけて10種類を食べているか確認できる。
「酸味やうま味のある調味料や香辛料を使い、塩分の取りすぎを防ぐ、具材を細かくして食べやすくするといった工夫もあります。片付けの手間を省くため、ひと皿に盛りつけるのもおすすめ。配食サービスを利用してもいいでしょう」と成田さんは話す。
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