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コラム

[信友直子さん]認知症の母 撮って向き合う

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[信友直子さん]認知症の母 撮って向き合う

 広島県呉市で暮らす80歳代の母が、認知症と診断されたのは2014年のことです。同居していた90歳代の父は、母を介護しながら家事に初めて挑戦することになりました。そんな夫婦の様子を娘の私が撮影したドキュメンタリー映画が「ぼけますから、よろしくお願いします。」です。

 映画のタイトルは母の言葉です。東京で暮らしている私は、毎年お正月には帰省し、01年頃から家族のプライベートな映像を撮っていましたが、だんだんと母の物忘れが増えていきました。認知症と診断され、実家に戻ろうかとも悩みましたが、父は「介護はわしがやる」と、私の仕事を応援してくれました。

 それまでにも認知症の人を取材したことはありました。ただ、認知症の家族に向き合うことと取材は、全く異なります。家族にしか見せない、本人のつらさや気持ちを初めて知りました。

 父は家事を全くしない人でしたが、90歳を過ぎて初めてリンゴの皮をむき、魚を焼くようになりました。「意外とイイ男だったんだ」と驚きましたね。父と母の絆の深さにも気付かされ、私と父の間には連帯感も生まれました。「認知症って大変なことばかりではない」と教えてもらいました。

 娘として、撮影者として、二つの立場の間で揺れたこともあります。映画では、母が洗濯物を床に並べ、その上に寝転んでしまうシーンがあります。娘としてはすぐに手伝ってあげたくなる。でも撮影者としては興味深い映像と感じてしまう。そういう時は1回は撮影して、次から手伝うようにしました。カメラを回していたからこそ、母の認知症に向き合うつらさを整理することができたと思います。

 両親の姿を映画にすることに戸惑いはありました。それでも父は前向きな返事をくれました。先日、母が脳梗塞で倒れて入院しました。今は、家族でこれからどう暮らしていくか話し合っています。2人の姿を最期まで見つめていくことは、私の使命だと思っています。

  ◇のぶとも・なおこ  1961年、広島県呉市生まれ。テレビ局などでドキュメンタリーの制作を手がけ、自身の乳がん闘病を撮影した作品などがある。映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」は現在公開中。

 (粂文野)

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