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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

認知症でタイムトリップ…過去へ未来へ時空を越える父

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漫画・日野あかね

頭の中はいつも秋

 認知症の検査や介護保険の要介護認定の調査などでは、「変化するもの」の質問は定番のようです。たとえば、季節、年齢、日付などの質問がそれにあたります。

 認知症になると、誕生日などの「変化しないもの」の記憶は比較的はっきりしていても、「変化するもの」の記憶は曖昧になってしまう傾向にあるようです。

 父さんも要介護認定を更新する際の調査で、毎回季節について質問されます。すると、春でも、夏でも、冬でも「今は秋だね~」と答えます。

 それを聞くたびに「あ~、父さんはやっぱり認知症なのか……」と、家族としてはガックリするわけですが、ある時、その受け答えを聞いて「もしや!?」と思うことがありました。

20年前の「あの時」のまま?

 認知症になってからの父さんの口グセのひとつに「肌寒い」というものがあります。真夏で30度を超えるような日でも「あ~、肌寒いな~」と、どう考えてもトンチンカンなことを言うのです。逆にどんなに寒くても「肌寒い」と、コートではなく薄手のジャンパーを着たがります。

 これはあくまで私の仮説なのですが、父さんが脳出血を起こしたのは20年前の10月。そうです、秋に倒れて、そこから認知症の症状がいろいろ始まりました。もしかしたら、当時の季節の感覚がずっと頭の中にあり、あの時に肌で感じていた温度が「肌寒い」発言につながっているのではないのでしょうか。

 そうであれば、「秋」と答えることも、「肌寒い」「ジャンバーが着たい」ということにも合点がいきます。一見、トンチンカンに見える受け答えや発言も、よ~く考えると、認知症の人の世界の中では正しいことを言っているのかもしれないのです。

年齢詐称疑惑も…なぜか「上乗せ」ですが

 一方で、どう考えても父さんの発言でわからないことがあります。同じように「変化するもの」として年齢を聞かれると、実際よりもかなり上の年齢を答えるのです。この間もケアマネジャーに年齢を聞かれ「83歳になるね~」と実年齢より10歳も上の年齢を答えていて、母さんと「え゛~!!!」となりました。

 よく認知症の人は自分が一番輝いていたころの年齢に戻り、今もそのころの生活をしていると思い込むという話を聞きますが、父さんはなぜか未知の年齢にタイムトリップしていて、ここ最近はずっと自分が80代だと思っているようなのです。

 介護仲間などにもこの不思議な発言について聞いてみたりするのですが、「年齢を上にサバ読むというのはないな~」という答えばかり。ますます謎が深まります。

 母さんは「デイサービスで年上のご友人ばかりできて、自分も同じぐらいの年齢だと思っているんじゃない!?」と、ちょっと辛口ではありますが「なるほど~!」という仮説を立てています。果たして真相やいかに!? 私たちには謎でしかない「父さんの年齢詐称」ではありますが、きっと父さんなりの理由がどこかにあるのでしょう。この謎を解き明かそうと推理を巡らすのも我が家の「認知症介護あるある」なのです。(岡崎杏里 ライター)

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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