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iPSでノロウイルス増殖、阪大チームが成功…予防・治療法の開発に活用へ
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した腸の細胞を使い、食中毒の原因となるノロウイルスを増やす方法を確立したとする研究成果を、大阪大などのチームが20日、発表した。予防法や治療法の開発に活用できるという。
ノロウイルスは、口から感染すると、小腸の上皮細胞で増え、激しい下痢や腹痛、 嘔吐 などの症状が出る。ウイルスを腸から採った細胞で増やす方法はあるが、人の生きた細胞を使うことには倫理面の課題があり、ワクチンや特効薬の開発などの障害になっていた。
チームはiPS細胞を小腸の上皮細胞に分化させ、厚さ0・01ミリ・メートルのシートを作った。シートにノロウイルスを感染させると、約70時間でウイルスの数が最大500倍に増えたという。このシートに免疫物質の抗体や、消毒薬などを加え、ウイルスの増殖を抑える効果も確かめた。チームの佐藤慎太郎・大阪大特任准教授(免疫学)は「ノロウイルス研究のスピード化が図れる」と話している。
佐藤俊朗・慶応大教授(消化器病学)の話「iPS細胞で作った腸の細胞は、胎児の細胞のように成熟しきれない課題がある。免疫や薬の効果を詳しく調べるには、大人の腸と比較した検証が必要だろう」