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慢性便秘症 2タイプに分類…新薬次々 広がる選択肢

思うように排便できない便秘に、長年悩まされる人も少なくない。慢性便秘症の原因や症状を整理し、治療法を示した初の診療指針が昨年まとまった。新たな薬も相次いで登場し、患者の選択肢が広がってきた。
80歳以上1割症状
厚生労働省の調査によると、男性で2%、女性では4%が便秘の症状を訴えている。高齢者に多く、80歳代以上だと、男女ともに1割を超える。
食べ物は胃などで消化され、小腸で栄養が吸収される。大腸にたどり着いた時に残った老廃物を便と呼ぶ。ところが、小腸や大腸の働きが低下したり、直腸や周辺の筋肉がうまく働かなかったりすると、便秘の状態になる。
診療指針では、便秘のタイプを「排便回数減少型」と「排便困難型」の二つに分類する。
排便の量が少なくなり、回数も減る「減少型」は、食事の量や食物繊維の不足、薬の副作用によるものがある。「困難型」は、直腸が女性器の 膣 にめり込む「直腸 瘤 」、肛門周辺の筋肉が緩まず便が出ない「アニスムス」など、直腸の形や筋肉の異常が原因となる。
検査で異常が見つからないのに、腹痛に加えて便秘や下痢が数か月続く「過敏性腸症候群」も、慢性便秘症と位置付けられた。
指針の作成に携わった兵庫医大内科学消化管科教授の三輪洋人さんによると、治療にはまず生活習慣の改善が必要だ。適度な水分の摂取や運動を心がけ、食物繊維や腸内細菌のバランスを整える乳酸菌などを意識した食生活が望ましい。
薬物治療では、便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの下剤を最初に使う。腸粘膜を刺激し、大腸の収縮運動を活発化させる刺激性の下剤は、薬が効きにくくなる耐性が懸念されるので長期使用は避ける。
昨年から新しい処方薬の発売が続いている。「リンゼス」は小腸や大腸の中の水分を増やし、便を軟らかくする。「グーフィス」は大腸内の胆汁濃度を高めて水分を増やし、腸の収縮を促す。がんなどの痛みを抑えるオピオイドの副作用で起こる便秘には、「スインプロイク」が使える。
酸化マグネシウムと作用が似た「モビコール」も、近く発売される。
効き目には個人差
タクシー運転手の兵庫県の男性(69)は約10年前、運転中に便意を何度も我慢していたら便秘になった。2年前に治療を始めたが、広く使われる酸化マグネシウムは効かず、昨年9月に新薬に替えると便が出た。「苦しかった毎日がうそのよう」と喜ぶ。
ただ、薬の効き目には個人差がある。また、下痢や腹痛などの副作用も確認されており、主治医とよく相談して使う必要がある。
一方、直腸瘤は直腸を元に近い形に戻すため、手術で直腸と膣の間を補強することが多い。アニスムスには「バイオフィードバック療法」を行う。肛門の周囲を取り巻く骨盤の筋肉を緩めるため、モニターで確認しながらセンサーのついた管をお尻に入れ、いきんだり肛門を締めたりする動作を繰り返す。
三輪さんは「専門医を受診し、原因に応じた適切な治療につなげてほしい」と話している。
(野村昌玄)
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