子どもの健康を考える「子なび」
コラム
不慮の事故(13) 分離する玩具も注意必要
窒息事故のリスクが高いのは、子どもの喉にちょうど詰まるサイズのスーパーボールやミニトマトなどだとお伝えしました。もっと大きければひとまず安心ですが、「盲点」もあります。
ある日の夕方、2歳の女児がイチゴ形の木製玩具(長さ約6センチ)を使ってままごとをしていました。幼児の口に入りにくいサイズと言えますが、この玩具は上下二つのパーツでできていました。面ファスナーでくっついており、引きはがすと、ちょうど包丁で切ったように真ん中で分かれる仕組みです。
ふざけて口に入れた女児を母親が叱ったところ、むきになって口を閉じ、下側のパーツを喉に詰まらせてしまいました。救急搬送されましたが、意識が戻らず自発呼吸も再開しないまま、10か月後に亡くなりました。
さらにイチゴ形玩具には、別の問題もありました。木製のためエックス線が透過し、緊急時のレントゲン検査では確認できなかったのです。MRI(磁気共鳴画像装置)検査でようやく発見されましたが、MRIは一部の病院にしかなく、装置の中でしばらく動かずにじっとしておく必要もあり、子どもの緊急時には簡単に使えません。
分離した玩具による事故は他にもあります。生後9か月の男児は、姉の人形に付いていたおしゃぶり(約1センチ大)を口に入れて窒息し、低酸素脳症で3か月後に亡くなりました。
そもそも、イチゴやおしゃぶりを模しているため、乳幼児が口に入れることは容易に予想できます。だからこそ製品化の段階で、危険な大きさのパーツに分かれないようにしたり、口に入れてもすぐに吐き出すよう苦み成分を塗ったり、万一喉に詰まらせても息ができるよう通気孔を開けたりといった、慎重な検討が必要だったはずです。
【略歴】
山中龍宏(やまなか・たつひろ)
1947年、広島市生まれ。小児科医。東京大医学部卒。子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフ キッズ ジャパン」(東京)理事長。
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