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ケアの質向上・効率化へ…介護にAI 開発進む

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指導や利用計画作成 実用化へデータ収集

ケアの質向上・効率化へ…介護にAI 開発進む

メガネに付いたカメラと天井のカメラの映像を端末で確認する坂根さん(右)と本田さん(左)。介助者役の男性(中央)がベッドに横たわる男性に話しかけている(東京都目黒区の東京医療センターで)

 介護の分野でも、人工知能(AI)の活用へ向けた開発が盛んになってきている。介護の質の向上や仕事の効率化につながると期待され、国も後押しする考えだが、良質なデータの収集など実用化に向けての課題も多い。

 「おはようございます。起きあがれますか?」

 国立病院機構東京医療センターの一室。小さなカメラがついたメガネとマイクを装着した介助者役が、ベッドに横たわる男性に近づき、話しかけながら、体を起こした。天井のカメラも介助の様子を映し出す。

 映像や音声はコンピューターに送られ、AIが「きちんとケア対象者と目を合わせているか」「ケアする人とされる人の距離」などを判定。動画を見た指導役が、動画上に「赤ペン」を入れ、音声と映像でアドバイスをアップする。

 フランスで生まれた認知症ケア技法「ユマニチュード」を、AIを活用して介護者に教えるシステムの開発風景だ。静岡大発のベンチャー(新興企業)などが2017年に合併して誕生した「エクサウィザーズ」(東京)が手がけている。

 ユマニチュードは、認知機能の低下によって生じる興奮や不安などを緩和し、世界的に注目されているケア技法だ。

 ユマニチュードは、同医療センターの本田美和子・総合内科医長が12年に日本に持ち込んだ。見る、話す、触れるといった動作が重要だが、「見ているつもりが、ちゃんと目が合っていない」「相手との距離が少し遠い」など、動作の微妙な違いが効果を左右し、指導者の数も少ないのが普及の壁になっているという。

 普及にテクノロジーの力を使えないか、本田さんが静岡大に相談したのを機に開発が始まった。年内にも介護施設で先行導入される。エクサウィザーズの坂根裕取締役は、「将来的には、一般家庭でも、介護の様子を撮影して投稿すると、AIが『もっとゆっくり』『肯定的な言葉を使って』などのアドバイスを返せるようにしたい」と話す。

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マイアについて説明する岡本社長。AIが自立度の変化を予測し、レーダーチャートで表示している(東京都中央区で)

 介護の利用計画「ケアプラン」を作成するケアマネジャーを支援するAIのサービスも10月に始まった。大手介護事業者や官民投資ファンドなどが共同出資する「シーディーアイ」(東京)が開発した「MAIA(マイア)」だ。

 利用した介護サービスと心身の状態の変化に関する約50万件のデータをAIに学習させた。ケアマネが要介護者の状態を入力すると、AIは自立支援に効果があると予測したプランを3種類、提示する。食事や排せつなどの自立度の変化予測もレーダーチャートで表示。リハビリ意欲を引き出す効果も出ているという。

 ケアマネはAIの提案を参考にしつつ、要介護者や家族の気持ちを聞き出しながら、最終的なプランを考える。「AIの活用で、提案の幅が広がった」といった声が上がっているという。

 岡本茂雄社長は「これまで良いプランを作れるかは職人芸のような世界だった。AIの活用で、データに基づいた科学的な世界に変えていきたい」と話す。

 政府の成長戦略にも、医療介護分野でのAI技術の開発、導入が盛り込まれている。厚生労働省は、介護、認知症を含む重点6分野についてのAI技術の開発加速ついて議論する有識者会議を開き、年度内に報告書をとりまとめる予定だ。

 国際社会経済研究所の遊間和子主幹研究員は、「介護分野でのAI活用の機運は高まっているが、まだ開発の初期段階。まずは質の高いデータ収集が必要になる。その上で、AI活用による効果検証を進めるべきだ」と指摘している。

認知症のケア研究会設立

 静岡大の竹林洋一特任教授(情報学)らは17年11月、認知症の本人や家族、介護・医療の従事者らが参加して知恵を出し合い、AIを使いながらより良いケアを研究する「みんなの認知症情報学会」を設立した。みんなで学び合う仕組みも作り、認知症になっても、安心して暮らせる社会を目指す。

 認知症は予防法や治療法は確立されていないが、本人や家族、介護者らのケア次第で、穏やかに暮らせている人も少なくない。ただ、竹林氏は「(そうしたケアは)属人的で、客観的な根拠に乏しく、広く共有し、発展させ続ける機会がなかった」と話す。

 学会では、本人や介護者の主観的な記録とともに、映像やセンサー、ウェアラブル端末などを活用してデータを収集。「どのようなケアを行ったら、どう状態が変化したか」や「どうやって困り事を解決できたのか」など、膨大な事例を集めてデータベースを構築し、より良いケアを探る。

 研究成果などを発信するフリーペーパーを発行し、認知症の人の事例分析を通して学び合う「塾」も開催。認知症に関する理解を深め、認知症の人とのコミュニケーションスキルを向上させるねらいだ。

 学会は12月16日には東京都文京区の東大本郷キャンパスでシンポジウムを開催する。問い合わせは、学会事務局(053・424・5150)へ。

 (田中ひろみ)

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2件 のコメント

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AIによるケアプラン作成について(続き)

syounosuke(トダマサオ)

そこで最近気になったのがパナソニックの見守りセンサーでした。 これはセンサーでえた人の動作データをエアコンからデータをスマホなどに飛ばす システ...

そこで最近気になったのがパナソニックの見守りセンサーでした。
これはセンサーでえた人の動作データをエアコンからデータをスマホなどに飛ばす
システムです。
データから動作を表示するところにAIが関与します。
いまはまだこれだけですが、将来は睡眠の傾向に加え、日中の動作(ディの利用とか)薬の情報から睡眠支援プログラムを提供していくといいます。
この睡眠のデータから日中の動作を推測しさらに日常生活の支援プログラムに着目したAIという方向はケアマネジャーの業務に生かせると感じました。
CDIのように認定調査のデータと保険給付のデータからケアプラン作成はデータそもそも間違いが発生しています。
ケアマネジメントのアセスメントをデータに活用するAI開発にはデータ収集が難しいという事情がありますので、この方向でのAI活用もいまのところ難しいでしょう。
これらのやり方、考え方と違い、日常の生活データから取り掛かるAIは1つの解決になると思います。
これは、いわば24時間のアセスメント実施です。
この部分からのデータ提供によるアプローチとケアプラン作成にデータを提供する方法はケアマネジャーとAIとの協働というやり方をつくっていくと見ています。
睡眠のデータではPARAMOUNTベッドの「眠りSCAN」やOmronの「ねむり時間計」睡眠センサーで株式会社O:のO:SLEEPは働く人のためのアプリそして排尿感知のデバイスとして有名なトリプルダブリューのDFreeさらにストレス度を計測して表示するSIMPEX QUANTUMのSQ-barなどなど多くのセンサー技術を持つ日本の企業の参加が望まれます。

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AIによるケアプラン作成について

syounosuke(トダマサオ)

今回、HCRで展示するということで、CDIの人にじっくり一時間半聞きました。 CDIのAI、MAIAは自立支援を目指すケアプランを作成するツール...

今回、HCRで展示するということで、CDIの人にじっくり一時間半聞きました。
CDIのAI、MAIAは自立支援を目指すケアプランを作成するツールです。
そのもととなるデータは、保険者が持っている認定調査のデータから給付請求の結果からケアマネジャーが作成するケアプランを作ります。
さて、これで不思議に思う人が多いでしょう。
ケアマネジャーは保険者保有の認定調査のデータで第1表2表、週間サービス計画、月間サービス計画、提供票予定票を作るのでしょうか。
豊橋市ではすでに実験的に32名のケアマネジャーに参加して操作をしたようです。
茨城県でも県ケアマネジャー協会の協力で行っていると説明を受けました。
このMAIAの基本となるデータについて説明がされていないのかもしれませんが、それにしても参加したケアマネジャーはなんとも思わなかったのかと不思議な思いをしています。
AIが扱うのは過去のデータです。これからのデータはありません。
ということは、制度改正で新しいサービス、加算ができたときには、データがない。というより制度改定によっていままでのデータは否定されかねないのです。
ほかに利用者のデータを使うことの法的な妥当性に疑問を感じています。
居宅介護支援事業所は、利用者のデータをサービス担当者会議や地域ケア会議で使用することの同意を取っていますが、それは介護保険法に規定されていることによります。
請求に用いることも法に代理受領の規定があることで使用ができます。
この利用者のデータを保険者は保有していますが企業に提供することの法的な妥当性はあるのだろうかと思っています。
と、いくつか疑問を直接、CDIの人に聞いてみました。
どうも認識がずれているように思ったのが今回の結論です。
しかし、AIを介護事業特にケアマネジメントに活用することには大きな期待を持っています。

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