がんを語る
医療・健康・介護のコラム
大腸がん(上) 患者最多 自覚症状少なく「突然の下血」「診断時には転移」
国民の2人に1人ががんを患う時代です。ヨミドクターでは、がんと診断され、不安を抱えながら闘病中の患者やその家族らへのサポートになればと、がん経験者による座談会連載をスタートします。
第1回のテーマは「大腸がん」。がんの中で最も患者が多く、2018年に新たに15万2100人が診断されると予測されています。早期なら治りやすいがんですが、自覚症状がほとんどなく、進行してから見つかるケースも少なくありません。直腸の進行がんが見つかり、今も病と向き合う3人の方を招き、それぞれの治療経過や手術後の生活、経験者として伝えたいことなどを話し合いました。
大腸がん 結腸、直腸などにできるがんで、直腸やその上部のS状結腸に特に多い。早期には自覚症状はなく、進行すると血便、下血などの症状が出る。がんがまだ浅いところにあれば内視鏡で切除できる。手術の場合、開腹と腹腔鏡を使う場合がある。肛門に近い直腸がんの場合、人工肛門(ストーマ)になるケースもある。リンパ節や肝臓、肺などに転移しやすい。検診では便潜血検査や大腸内視鏡検査が行われる。
参加者(敬称略)
荒居 剛(あらい たけし) | 50歳 | 建設機械メーカー勤務 |
清水 順子(しみず じゅんこ) | 67歳 | 主婦 |
山田 豊(やまだ ゆたか) | 59歳 | 建築業 |
進行役 | ヨミドクター副編集リーダー・藤田勝 |
首の腫れから発覚 手術でストーマに 抗がん剤治療は中止
――簡単に自己紹介と治療経過をお願いします。
清水(写真右) さいたま市から来ました清水です。2014年の12月に大腸がんと言われて、翌年5月に手術をしました。そこに行き着く経過が珍しく、首のリンパ節や扁桃腺が腫れたのが始まりでした。大学病院の耳鼻科にかかっても治らなかったのですが、その先生の「怪しい」という判断がよくて、PET-CTで調べたら大腸がんとわかりました。
大本のがんは放射線で小さくして腹腔鏡で手術しましたが、リンパ節にもがんがいっぱいありました。今はすごく元気なのですけれども、抗がん剤治療は途中でやめています。白血球が非常に少なくなって、医師から「これで余病を併発したら、もう命取りになるのでやめていいかい」と相談されて中止しました。だから、まだちょっと怖いです。絶食状態が1週間続くとか、いろんなことがありました。今、3年半が過ぎたところで、このまま何もなく1年半過ぎれば一応5年の区切りを迎え、何とか普通に生きられるのかなというところです。
がんは直腸の出口に近いところだったので、先生には「肛門を温存したら一日中トイレに座っていることになる。その勇気があるなら残してもいいけれども」と言われて、そんなことは絶対不可能だと思い、人工肛門にしました。現在、人工肛門と人工膀胱(ぼうこう)の人の団体である日本オストミー協会に入っていまして、そちらの仕事をさせてもらうことが励みになっています。
海外駐在中に大下血 帰国して手術、肛門温存して仕事復帰
荒居 私は建設機械メーカーに勤めていて、海外駐在中に発症しました。11年にカナダからオランダに転勤になった際、会社の定期健診を受けに日本に帰ってきました。その時、血便がちょっとあり、触診で「痔でしょう」と言われました。ところが、オランダに転勤して2年後、明け方に大下血をして貧血になり、完全に視界が真っ暗になり、病院に緊急搬送されました。
そのときも最初は痔だと言われ、いったん家に戻ったのですが、しばらくしてもう一回下血しました。今度はさすがに病院では先生がいっぱい出てきて、1週間検査して「直腸がんです。あとは転移の検査をします」と言われました。
現地で治療するつもりでしたが、身内に医療関係者がいたので聞いたところ、「海外は日本人の外科医より手術は劣ると思う。ただ、化学療法や医療機器は発達している。どちらをとりますか」ということでした。がんは肛門からすごく近いところだったので、オランダの先生は、「ほぼ永久ストーマになると思います」と。子供も小さかったので、可能性があるのだったら、いろいろ聞いておいたほうがいいと思い、日本に戻ってきたのが13年3月。幸い放射線がすごく効いて、がんが小さくなり、手術で肛門を温存できました。
その後、肺への転移も疑われて切ったりもしましたけれども、今5年半たち、再発とか転移はありません。ただ生活の質は全く変わってしまい、仕事で長い会議があるとちょっとドキドキしますね。トイレに行きたくても、自分が司会をやっているときなどは「ちょっとすみません」ともなかなか言いづらくて。
――休職期間はどのくらいでしたか。
荒居 現地で倒れたときから1年間休職しました。今は検査と仕事の繰り返しです。半年おきに、どきどきしながら検査して、また仕事をやる。半年ごとに命の宣告をされているような感じです。
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知りたい人には知ってほしい画像診断の裏表
寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受
実の親(非医師)から「信頼のおける医師とは」とかよく説教メールが来ます。 勿論、親族やその知人の癌でもわざわざ存在を知らせたうえで相談はしません...
実の親(非医師)から「信頼のおける医師とは」とかよく説教メールが来ます。
勿論、親族やその知人の癌でもわざわざ存在を知らせたうえで相談はしません。
彼らは学会や研究会で有名な診断医や指導医、教授とも真面目に議論し、意外とみんな気づかない病変や読み筋を拾う僕を知らないので、肩書でしか判断できません。
とはいえ、これが一般的な社会的評価です。
「専門医や博士号は指標であって絶対ではない。偉い人にはそれがわからんのですよ」とかツッコみたくもなりますが、肩書がないだけに信じてくれる人のためにも標準医療や先進医療の裏表も含めて勉強しています。
さて、今回の話の中で目につくのは社会制度のルーチンで発見されなかった癌の事です。
今の標準であるバリウムや内視鏡の検査は消化管外の検出が弱く、胸部レントゲンやマンモグラフィはCTやMRIなどの3次元の画像に比べれば、やはり病変の検出が難しい。
PET-CTも、CTやMRIをゆっくり読めば発見できる多くの病変に関していえば、無用なコストと被ばくですが、読影医不足と過重労働の現実の中で、微細な病変を多くの医師が発見しやすい利点があります。
そして、本文でもありますが、転移巣や転移リンパ節の方が発見しやすい症例も時々目にします。
偉そうに書いてますが、僕が見落としをしないわけではなく、見落としをする自分や機械の弱点を知って対策を持っているだけの事です。
健診でも50歳以上の方や有症状の方の高度検査を推奨しています。
今回はがんがテーマですが、癌だけでなく、よくある疾患の典型的なケースの処理ミスで保険診療による寿命や健康寿命の延長、緩和治療の恩恵を受けられないのはもったいないです。
自分だけは大丈夫、うちの地域は大丈夫、そういう気持ちももちろん大切ですが、一方で、検査の性質や自分も他人もミスを犯し得る存在と知ることがより良い医療を受けるコツです。
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